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代表・松野が聴く!生産者・大島さん 後編 – 有機農業とハウス栽培 –

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代表・松野が聴く!生産者・大島さん 後編 – 有機農業とハウス栽培 –

代表・松野が聴く!生産者・大島さん 後編 – 有機農業とハウス栽培 –

有機農業の生産者との対談企画・第7弾、大島太郎さんの後編です。

前編 では、研究畑から新規就農した大島さんのバックボーンと、科学の目で見た有機農業、良い土とは何かについて、お話を伺いました。

後編では、ハウス栽培に取り組む大島さんに、そのメリットを伺いながら、将来の有機農業の可能性について、話を深めていきます。


聞き手は引き続き、弊社代表の松野と、新川、大西です。

【大島】大島太郎さん
【松野】弊社松野
【新川】弊社新川
【大西】弊社大西


ハウス栽培は有機農業と相性が良い

【松野】今の広さは、どれくらいですか?

【大島】露地が5~6ヘクタールぐらい、ハウスが1ヘクタールぐらいです。ハウスの割合を増やしているところです。

【新川】ハウスでは、どんなものを栽培されていますか?

【大島】主にサラダ向けの葉物野菜ですね。

【松野】ハウスを増やすのは、どうしてですか?やはり通年出荷をしようと?

【大島】ええ。もう2年目、3年目から明確にハウスの割合を増やしたいと思っていました。当然、真冬でも作れるっていうのは大きいです。この辺は、冬にマイナス10度くらいになっちゃうんで、露地では栽培できないんですが、ハウスで葉物野菜だったら、加温しなくても作れるんですよね。プチヴェールとかブロッコリーとかでも、なんとか作れるんです。

【松野】あ、そうなんですね。

【大島】それに、ハウスは全部ネット張ってあって、100%じゃないんですけど、かなり虫の害を防げるっていうのもあるんです。また雨避けにもなるので、トマトとか果菜は病気対策にもなります。

【新川】なるほど!

【大島】もう一つ、やり始めて5年ぐらいなんですけど、太陽熱消毒ってあるんですね。夏場に水まいて、ビニールのシート張って閉め切る。そうすると、病気も減るんですが、何より草が生えてこないんですよね。それが一番うれしいんです。

【松野】はいはいはい。

【大島】無農薬栽培では、特に露地の畑の草対策って大変なんですけれど、ハウスの中は太陽熱消毒で草を減らせます。それに、夏にしっかりやっておけば、冬の間もそんなに草が生えないんです。

【松野】あ、そうなんですか。

【大島】そうやって労力減らせて、作物もよく育つので、もう生産性がぜんぜん違うんです。それでハウスの割合を増やそうとしています。有機でどんどんハウス増やそうっていう人は、そんなにいないかもしれないですけど、まぁ自然では無いですからね(笑)
でも私の場合は、有機農業とハウスっていうのは、無農薬でも安定して作れるっていう意味では、非常に相性がいいと思うんです。

【大西】単純に疑問なんですが、太陽熱消毒って、一回いろんな物を殺すわけですよね。先ほどの「土の良さ」の話で言う「生物性」が悪くなりそうな気がするんですが、どうなんでしょう?

【大島】えぇ。確かに私も最初は心配だったんですが、太陽熱消毒をやって、土の状態が悪くなったっていうことは、今まで無いんですね。実際に影響があるのは、表面から5cmぐらいなんですよ。表面は100℃近くなって、微生物はほとんど死んじゃうと思うんですけど、微生物は地下何十cmまでいるので、戻ってくるんですね。本当に表面的なことろだけなんですよ。

【大西】あぁ!なるほど!

【大島】だから耕しちゃうと、ほとんど元に戻ります。太陽熱消毒やった後でも、耕せばもう、草がぼうっと生えてきます。

【松野】あ、そんなもんなんですか。

【大島】はい。ただその表面5cmが、作る側にとってはだいぶ楽になるんですよね。
逆に、病気をなくすっていう意味では、ゼロにはならないんですよ。線虫対策になるって言うんですけど、線虫ってどんどん下にもぐっちゃうので、そんなには減らないんです。病原菌も同じだと思うんですよね。下の方には残っちゃう。

【松野】なるほどなるほど。

【大島】慣行栽培だと、太陽熱消毒プラス、農薬を使って、下の方まで病気が無くなるまでやるんですけど、うちの場合は、そこまで期待してなくって、あくまで草の対策です。

仕入れる側も嬉しい ハウスと露地の併用

【松野】実は、個人的にはハウス賛成派なんです。千葉の有機農家さんで、年間4品目の葉物だけをハウス100棟以上建ててやってらっしゃるところがあるんですけど、食べる側としても売る側としても、すごいありがたいんですよね。

【大島】今多いですよね。長野県内にもハウス300棟で、ほうれん草を作ってる所があるんです。そこは有機じゃないですけど、たぶん農薬もそんなに使わずにやってると思うんですね。安定して生産、労力を減らして作るっていう上では有効ですね。

【松野】季節感も大事なんですが、レストランさんで使っていただく場合、できるだけ長期間使いたいって要望はあるんですね。大島さんの赤からし水菜を、必ず毎回頼んでくださる料理人の方とか、やっぱりいらっしゃいますので、供給が切れないっていうのはありがたいです。僕としても、ぜひハウスは増やして欲しいと思っています。

【大島】ハウスを建てるのにお金がかかるので、難しいところもあるんですけど、有機で安定して作る上では非常に有効なアイテムだとは思いますね。

【松野】やはり今、天候リスクがすごく大きいですよね。毎年どこかで異常気象があって「今年駄目だったわ」って聞きます。商売的に辛いのもありますが、単純に「あ、今年はあの人のあの野菜が食べられないんだ」っていうのが、ものすごく寂しかったりするんですよね。全部が全部じゃなくていいので、露地とハウスと組み合わせてやってほしいな、という希望があります。

【大島】有機では、病気、虫、草、その3つをどうするかって言うことに尽きます。ハウスを有効に使えば、非常に生産性を上げられるので、使わない手はないと思います。初期投資の問題さえクリアできれば、増えてくと思います。

【松野】お答えづらいかもしれないですけど、大島さんの主観で結構ですので、露地とハウスで、味に違いとかあったりしますか?

【大島】味の違いっていうのはそんなには無いと思いますね。露地かハウスかっていうよりも、肥料のやり方とかですね。

【松野】そうなんですね。

【大島】ただ気をつけないといけないのは、ハウスで油断してると、肥料が過多になっちゃうんです。露地は雨で流れますけど、ハウスはどんどん溜まっていっちゃうんです。

【松野】あぁ、なるほど。

【大島】ハウスの中で、やたら虫が出てるなという時には、肥料がすごい残っちゃってるっていうことがあります。露地に比べて、かなり肥料を減らしてやるっていう意識でやんないと、多過ぎることになります。よく育つんですけど、やっぱり美味しくないってことになりますね。

【松野】世間ではIoTとか、AIとか、IT技術と農業が融合して、っていう流れがありますが、もともと研究畑にもいらっしゃった、大島さんから見て、どんな印象ですか?

【大島】自分でやるっていうことは無いと思いますけれど、大きな流れっていうのはあると思います。植物工場みたいなのもあり、より人手をかけないで管理していくやり方は、どんどん進んでいくとは思います。
ただ、私は当初から「隙間農業」って言ってますけど(笑)そういう技術ではカバーできないところっていうのは当然出てくるので、そこを埋めていれば、この先10年ぐらいは需要はあるかなと(笑)

新規就農でも必要なのは経営スキル

【松野】今、スタッフってどれくらいいらっしゃるんですか?

【大島】私と妻入れて、13人ですかね。結構いるんですよ。

【松野】研修の方はいらっしゃいますか?

【大島】だいたい常時2名は、いずれは自分で就農したいっていう研修で、その他はパートが1人だけ、あとは全員、正規雇用ですね。

【松野】すごい、素晴らしいですね!これまでに卒業っていうか、独立された方は、どれくらいいらっしゃいますか?

【大島】5人はいますね。

【松野】上手くいかなかった人、就農したけどやっぱり諦めて、っていう方もいらっしゃいますか?

【大島】諦めてはないですけど、今は経営的に副業の方が多いかな?(笑)っていうのはいます。他の者は農業でやってますね。まぁ簡単ではないですけど、今、就農支援、なんか呼び方変わってますけど(編者注:農業次世代人材投資資金)それを利用してるものもいますね。5年間もらえるので、だいぶハードルが低くなりましたね。

【松野】新規就農を考えてくれる人達って、すごい大事ですし、私たちも応援しているんですけど、研修で来る若い人にも、いろいろタイプがあると思います。いざ独立するとなると、どういうところが大事と思われますか?

【大島】うーん、難しいんですが…独立するには、もちろん技術は身につけてもらいたいですが、経営も出来ないとやっていけないよって、そういう話もします。経営が難しそうなタイプには、農業を仕事としてやっていくのか、趣味として関わるのか、やり方は考えた方がいいよって、はっきり言うこともあります。

【松野】どういう業界、どういう職種であっても「経営」は独立するのに必要な、共通したスキルですよね。

【大島】逆に、いつ独立しても大丈夫っていう人も来ます。当然、技術的なことは一通りやって覚えないと、ですけれど、あとはもう問題ない、やっていけるだろうな、っていうのもいます。

【松野】物を作るとか育てる仕事、特に農業って、すごくセンスがいると思います。決まった型があるわけでもないし、毎年条件違いますし、同じ一面の畑でも、場所によって育ちが違ったりとか、そういうところの観察眼ていうか、日々、自分で捉えて修正してっていうような仕事だと思ってるんです。センスっていう言葉で片付けていいのかわかんないですけど、その辺は有る、無しとか向き、不向きってあるんでしょうか?

【大島】もともとセンスを持ってる、持ってないっていうのは、あると思います。でもまぁ、本人に独立したいっていう希望があれば、センスないから駄目だよとは言えないんで(笑)
ただ、農業って幅があるので、作る品目を絞って、出荷先も限られたところに、とシンプルにやれれば、可能性があることもあります。うちみたいに、多品目作って、販路も多様にって言うのは、考えないほうがいいよって話をすることはあります。

【松野】やっぱり性格とかタイプとか、ありますよね。

【大島】さっき言われたような農業的なセンスがあるに越したことは無いんですけど、それを求めちゃうと、元も子もないって言うとこも有るので(笑)

【松野】そうですよね。どの業界でも、人材の育成って答えがなくて、難しいですよね。

差が縮まる有機と慣行

【松野】ヨーロッパでは環境問題への意識から「持続可能な農業」という意味で、有機農業への取り組みや、消費者の需要が高まっています。日本でも、慣行農法(編者注:農薬や化学肥料を使う一般の農法)を続ける一部の産地では、最近、収穫量が落ちてきたといった話を聞くことがあるんですが、大島さんがご覧になっていてどうでしょうか?

【大島】この辺の地域では、特に感じることはないですが、この辺は、野菜の農家がそれほど多くないから、聞かないだけかもしれません。それより、慣行農家の人たちも、土を良くしようと意識している、年々そういう傾向にあるように思います。農薬や化学肥料を使うにしても、有機物も入れたり、気を遣ってやってる人が、この地域では割と多いように思いますね。

【松野】なるほど。実は最近、それほど高くないレストランとか、オーガニックを謳ってないレストランに入っても、普通に美味しいレタスが出てくることがあるんです。スーパーでも、たまに美味しい野菜に当たったりします。農協に出荷している慣行農家さんでも、土作りにこだわっている方が増えているのかも知れません。

【大島】両方から近づいてきているようには思いますね。今、農協の肥料の原料価格が上がってきてるので、肥料を極力減らす栽培方法にしていきましょうっていう感じになってきてるんですね。で、農業新聞を見てると、従来の半分の肥料でできるとか出てるんですよね。今まで何だったんだって(笑)

【全員】(笑)

【大島】従来の栽培指針に出ていた肥料の量ってものすごいんですよね。まぁそりゃあ、どんどん大きくはなるかもしれないですけど、当然美味しくはないでしょうし、病気も虫も出ると思います。肥料が高くなったから減らしましょう、ってなってると思うんですけど、従来の基準は明らかに多くて、最近はその基準でも減ってきているので、味なんかも良くなってきているんじゃないかな、とは思いますね。

【新川】それは、この地域に限ったことでしょうか?

【大島】新聞を見てると、全国的にそういう傾向になってますね。そんなに知り合い多いわけじゃないですけど、高原野菜とかの産地でも、肥料を極力減らしたいっていう考えでやってる人がいますね。

【松野】有機と慣行と、お互いが交流する勉強会みたいなのって、あるんですか?

【大島】あんまり交流は無いですけど、大きな流れとしては、慣行栽培であっても、肥料を減らして農薬もできれば減らしていきたいっていうのがあります。逆に有機の方からは、農薬や化学肥料を使うことは無いですけど、技術的にレベルアップして、収量でも慣行栽培に引けを取らないように、近づけているのかなって思いますね。

【松野】先日、北海道の有機農家さんに会ってきたんですが「北海道から本州へ運賃が高いっていうのがあるので、どうしても作物自体のコストを下げないといけない。北海道は畑が広くて機械を入れやすいから、機械でどんどん効率化をしている。いずれは、慣行の野菜と同じ金額まで持っていきたい、同じ金額になったら絶対に有機が選ばれるに決まってるだろう?」っておっしゃっていました。

【大島】はい、はい。

【松野】千葉でも、同じ考えの有機農家さんがいらっしゃいます。特に慣行栽培から有機栽培に切り替えた農家さんなんですけど、そういう傾向にあるんだなと思います。

【大島】そうですね。有機だから、ってそんなに特殊なものでは無くなってきているように思います。販売の面では、一概に良いとは言えないかもしれないですけど、環境とか含めて考えれば、有機と慣行の差がなくなってきてるのは、まぁ悪いことじゃないとは思います。

【松野】そうですよね。確かに、売上っていう面で考えると、あんまりいい話ではないのかもしれないですけど(汗)

【全員】(笑)

作る人と仕入れる人が繋がるように

【松野】ここ数年、またオーガニック野菜が注目される機運があったので、僕の勝手な思いですが、もっと速いスピードで有機野菜が広まると考えてたんです。でも実際は、そうなってない。もし野菜全体の5%とか10%が有機になれば、大きな店に行けば、売り場は小さいけど、だいたい置いてるよね、っていう状態になるかと思うんですが、まだまだそこには遠い。雑な質問ですみませんが(笑)、なぜもっと早く普及しないんでしょう?

【大島】そうですね、消費者があえて有機を選ぶっていう動機がそんなにないのかもしれません。有機JAS認証も、今ひとつ決定力不足という話も聞きます。うちは有機JAS認証を、できれば取りたいんですが、今のところ無くても困ってない。間にあまり人を介さず販売できているので、野菜を使う人も、どういう人がどういう考えで作っているか、理解してもらっている。そういう仕組がしっかりした流通があれば、有機JASっていうのは必要ないと言えば必要ないんですよね。

【松野】なるほど。我々としては、やはりその、生産者さんの顔が見える、とか「誰が作ってるの、これ」って言うのは、一番伝えたいところがなんです。そのためにも、間に入る人をできるだけ減らしたいんです。ただ、宅配便のコストが急に大幅に上がっちゃったりして、なかなか苦戦してます。

【大島】うちも宅配便の値上げにあって、もう野菜をクール便で送ると、野菜の値段と同じぐらいの送料が乗っちゃう、それだけで価格が倍になっちゃうんですよね。そこまでお客様に負担してもらうのもどうなのかな、と思いますので、物流の仕組みは考えないといけません。

【松野】苦労はしているんですが、まぁなんと言うか、単純に僕は、今取引している農家さんの野菜を食べ続けたいので、この仕事もやり続けるっていうだけの話なんですね(笑)実際訪問している農家さんも多いんですが、お話を伺うと、本当にこう個性が出るので、それがやっぱり面白いんです。今日、大島さんのお話を伺って、大島さんの野菜の理由がよくわかりました(笑)

【大島】私も、農家の方と話す機会が有ると、すごい勉強になります。特に有機でやってる方は、それぞれ考えをお持ちですから。

【松野】そうですね。お話を聞くと我々の売り方のヒントにもなりますし、また定期的に伺いたいと思います。お邪魔だと思いますけど(笑)
【全員】(笑)

【大島】そうですね。野菜を出荷するにしても、直接お会いしているところと、ただ電話だけのところとでは、やっぱり違いは出ちゃいますよね。モチベーションっていうか、しっかり作っていこうっていうのにつながっていきますね。

【大西】野菜を仕入れてもらっているレストランの方とかとかお連れしてきても大丈夫ですか?大島さんの野菜はファンも多いので。

【大島】えぇ。大丈夫です。

【松野】レストランのシェフや、消費者の方に畑に来てもらって、農家さんと喋ってもらうイベントとか、逆に農家さんにもレストランに行ってもらって、料理された自分の野菜を食べてもらうイベントとか、そういう機会作りをするのが、間にいる我々の価値だと思います。またお邪魔させてください。今日はありがとうございました。

【大島】ありがとうございました。


取材日: 2018/06/23

今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
前編 でも、ディープなお話を伺っています。併せてご覧ください!

代表・松野が聴く!生産者・大島さん 前編 – 有機農業の科学と実践 –
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有機の生産者さんとの対談企画・第8弾は、大島太郎さんです。 長野県南部の丘陵地で有機栽培を15年営む農家さんです。 大学で堆肥を研究した後に就農した大島さんに、科学の目でみた有機農業について伺います。

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