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代表・松野が聴く!生産者・大島さん 前編 – 有機農業の科学と実践 –

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代表・松野が聴く!生産者・大島さん 前編 – 有機農業の科学と実践 –

代表・松野が聴く!生産者・大島さん 前編 – 有機農業の科学と実践 –

有機農業の生産者の方々からディープなお話を伺う企画の第8弾です!
オーガニック野菜との向き合い方、また有機農業の未来など、多方面に語っていただきます。

今回は、大島農園の大島太郎さんです。

長野県南部のなだらかな丘陵地にある畑で、無農薬、無化学肥料の栽培を15年続けてきた、働き盛りの農家さんです。カラフルな大根やニンジンといった彩り野菜と、葉物野菜を得意とされ、特に最近はハウス栽培に力を入れていらっしゃいます。

実は研究畑から就農したという大島さん、今回は、そのバックボーンと、研究者・科学の目で見たオーガニック農業について伺いました。

聞き手は、弊社代表の松野と、新川、大西です。

【大島】大島太郎さん
【松野】弊社松野
【新川】弊社新川
【大西】弊社大西


大学で堆肥を研究 そして実践の道へ

【松野】大島さんが農業を目指されたきっかけっていうのは、何ですか?

【大島】もともと家が兼業農家だったので、農業には興味があって、大学も農業関係のところへ行っていたんです。ただ、家もそんなに農業収入が多いわけではなかったですし、自分で野菜を育てるつもりではなく、研究みたいな感じでできればいいかなって思ってました。

【松野】はいはい。

【大島】大学では堆肥の研究で、有機物、家畜の糞や生ゴミから作った堆肥で栽培試験をやっていました。それで、実際に堆肥を使ってみると、野菜は健康に育って、良いものができるっていうのが体験できたんです。農薬とか化学肥料とか使わないでも、結構できるじゃないか、って。

【松野】なるほど。

【大島】有機農法を実践する団体に入って研究をさせてもらう機会もありました。そういう経験を重ねるうちに、自分でも作った方が面白いだろうな、という気持ちになったのが、きっかけだと思います。

【松野】堆肥を研究テーマにしようと思ったのは何故ですか?

【大島】大学一年の時に、近くで「信州博覧会」っていうのが開催されて「リサイクル館」っていう展示場があったんですが、その館長を大学の先生がやっていた関係で、アルバイトで入ったんです。展示の一つに、生ゴミを動物の餌にしたり、糞を堆肥にしたり、っていうのもあって、敷地の中で実際に動物を飼うって、かなり無茶なこともやってたんですけど(笑)

【松野】あぁ~、なるほどなるほど。

【大島】漠然と環境問題に関心はあったんですが、そこでゴミを有効に使うっていうのを実際に見て、すごく面白いなと思ったのがきっかけです。その館長の先生、本当は学科が違ったんですが、頼み込んで、その先生に付かせてもらいました。

【新川】農業関係の大学に進もうと思われたのは、どういう理由なのですか?

【大島】それはあの…(笑)…高校生の頃、漠然と海外に行きたかったんですよ。近くの駒ヶ根市に海外協力隊の研修施設があるんですけど、海外行くのに手っ取り早いのが技術指導みたいで、農業はそれなりに好きだったし、農業技術指導みたいなので海外行ければいいかな、っていうそんな程度なんですよ。

【松野】いや「そんな程度」というよりは、素晴らしいことだと思います。

【大島】結局、海外協力隊には入らなかったんでが、大学でリサイクル研究の先生に付いた時に、タイの大学から呼ばれたんです。当時、タイでは生ゴミが野積みで、悪臭とか問題になってて、その処理とか有効活用とか何とかならないか?という話で、先生と一緒に2年弱ですけど、タイのチェンマイに行く機会がありました。まぁ思わぬ形で希望が叶ったっていうことで。

【松野】結構長く行かれてたんですね。

【大島】えぇ、いろいろタイミングが良かったっていうか、それが20年位前ですね。

科学の目で見る有機農業「良い土」とは

【松野】堆肥を使うと野菜が健康に育つというお話がありましたけど、具体的なところ、例えば農薬・化学肥料で育てた野菜との違いって、どうでしたか?

【大島】堆肥にも色々ありますし、作り方でも全然違って来ますので、堆肥さえ入れればいいっていうわけでは無いんですけど、大学の研究では、堆肥をすき込んだり、上にマルチのようにかぶせたりとか、色々試したんです。その結果、簡単に言えば「上手に使えば、土が良くなる」っていうことだったんです。

【松野】なるほど。

【大島】大学の研究では、物理性 – 土の硬さや保水力ですね、あとは、化学性 – 窒素とかカリウムとかの成分量ですね、それと、生物性 – どんな微生物がいるか、という点で土を評価していたんです。化学性だけで言えば化学肥料を使う方がコントロールしやすいんですが、有機物を入れることによって、特に物理性と生物性が良くなります。微生物が増えて、物理性が良い土っていうのは、野菜にとって非常に良いです。
1年2年では、そんなに差は出ないですけど、その研究室では10年間のデータを積み上げていて、その結果です。

【松野】10年ですか。そのぐらい時間がかかるんですね。

【大島】何年もやってると、差が出ます。土の硬さだけでも、堆肥を全く入れないところと、10年入れたところでは、全然違います。堆肥は表面にしか入れないんですけど、土の深いところまで効果があるんですね。

【松野】【新川】【大西】へぇ!

【大島】そういうのも面白いですよね。

【松野】野菜にとって良い、野菜が健康に育つと言うのは、具体的にどうなるんですか?野菜が傷みにくい、長持ちするとか?

【大島】「虫の付きやすさ」と「病気の出る出ない」っていうのが、明らかに違いますね。同じような条件で育てていても、虫が付く株と付かない株があって、よく調べると、虫が付くところは土の状態が悪かったり、肥料が多かったりしますね。そういうのが虫食いや病気になっちゃう。逆に土の状態が良いところは、特に虫除けしていなくても、あまり虫がつかないです。

【松野】なるほどなるほど。

【大島】虫が付きやすい株は、味でも若干エグみがあるように思います。

【松野】確かに、他の農家さんに伺っても、土が出来てくると、虫も付きにくいし、病気もでない、っておっしゃる方が多いです。

【大島】そうなんですよね。

仕入れてわかる 成功した有機野菜は虫食いが少ない

【新川】そこをもう少し。一般的なイメージだと、美味しくて健康な野菜の方が、虫から見ても美味しそうで、虫に食べられやすいって考えがちだと思うんですけど、土が良い方が虫が付きにくいのは、どうしてでしょう?

【大島】本とかに書かれている理屈としては、一番わかりやすいところでは、葉っぱの中の窒素、硝酸態窒素が過剰になることが、虫が付きやすくなる原因と言われています。窒素が多くなると、葉の表面が弱くなる、繊維を構成する炭素分に比べて窒素分が多いと、植物自体が弱くなって、それを虫が狙ってくる、まぁ理屈ではそういうことらしいです。

【新川】はい。

【大島】土が良いと、そこら辺の成長のバランスが良いと言うか、表面が適度に固くて、虫に対して抵抗性を持つようになります。逆の方に偏りすぎると、固過ぎて人間が食べるのにも適さないっていうことになっちゃうんですけど(笑)
土の状態が良いと、人間が食べられないほど固くもなく、かといって虫食いだらけになることもなく、と野菜自体がバランスよく適度に育ってくれるように思います。

【新川】そうなんですね。
【松野】一般の消費者では、有機野菜って虫食いが普通、みたいなイメージを持ってらっしゃる方が多いんです。でも実際は、大島さんの野菜も、うちが仕入れている他の有機農家さんも、小松菜でもほとんど虫が食ってる所が無い、虫食ってたとしても外葉の一部だったりするので、今のお話は良くわかります。

【大島】まぁ、うちも上手くいく時もあれば、そうでない時もあって(笑)あんまり精度は良くないんですが、実際に作ってる中で、そういうのは非常に感じますね。

【松野】堆肥の量は、結構入れてましたっけ?

【大島】量的には、当初よりは少なくしてます。入れ過ぎると良くないんですよね。最初は、とにかく入れると良くなる気がして、結構ドカドカ入れてましたけど、副作用も結構あって、今は量とか使い方は調整してきていますね。

【松野】そうですよね。

【大島】土が良いっていうのは、物理性、化学性、生物性すべて含めてなんですが、物理性と生物性が悪くても、化学肥料をやればそれなりに育つんです。でも土の状態が良い方が、悪天候だったり、いろんな条件に対して幅があるというか、対応力があるんですね。
その幅がないと、条件が悪い時に農薬を使わないといけなくなるんですけど、土が良ければ、良い野菜が安定して作れるっていうことだと思うんですよ。

【松野】【新川】うーん、なるほどです。

業務用プロのニーズに応えた15年

【松野】少し話は戻りますが、大学を出てから就農するまでは、どうされましたか?

【大島】いつくかの団体や農園で働いてみました。北海道や四国にも行きましたね。それで30歳になった頃に、長野に戻ってきました。

【松野】じゃあちょうど15年ぐらい前ですね。面積はどれくらいで始められましたか?

【大島】8反歩ぐらいですね。兼業農家だったので、いちおう場所だけはあったんです。有効には使えてなかったんですけど(笑)

【松野】作物は、どんなものから始められたんですか?

【大島】1年目は特に販売先も決まってなくて、とりあえず一般的なもの、キャベツ、レタス、大根、みたいな普通の野菜を作りました。

【松野】売るのはどうされました?

【大島】ジャガイモは、前にお世話になった農園に頼んで売ってもらったりしましたけど、他の生鮮野菜はそういうわけにはいかないんで、車に積んで飲食店回ったり、直売所に持って行って売ったりしました。まぁ、あんまり売れなかったですね(笑)

【全員】(笑)
【松野】「あ、この仕事やってけるかな?経営的にやってけそうだな。」って思ったのは何年目位ですか?

【大島】まぁ今でも怪しいんですけど(笑)

【全員】(笑)

【大島】2年目から、売上自体はそれなりにあったんですけど、採算が合ってなかったですね。もう5年位は採算が合わなかったです。今でも経営的には楽ではないんですけど、それなりにお客さんもついてくれて、目処がついたのは7年目、8年目とかですね。

【松野】今だと、品目はどのくらい作ってますか?

【大島】今、60品目って言ってます。その品目の中で品種があるので、それでいうと120~150の間くらいだと思うんですけど、ちょっと減らしてきてます。私自身は何でも作ってみたい方なんですけど、出荷担当から「もうちょっと、どうにかしてくれ。減らしてくれ」って言われてます。注文を取るのも大変ですからね。

【全員】(笑)
【松野】なぜ種類が増えていくんでしょうか?「作ってみたい」っていう挑戦意欲ですか?

【大島】2年目でしたが、たまたま地元のフランス料理店で親戚が働いていて、興味持ってもらったんです。そのシェフが、こういう野菜が欲しいとか、こういう風に使いたいとか、いろいろ提案してくださったんですよ。私も売り先が特に無かったし、何作るっていうのも定まってなかったんで、言われたものはとりあえず作ってみる、そうしてると一気に種類が増えました。

【松野】そうなると増えますよね。こういう色の、とか…

【大島】サイズも、一般のものとは違ったりもするんです。それで、そういうのを作るようになると、今度他の飲食店からも興味を持ってもらうこととかあって、なんとなく種類も増えて、売り先もそれなりに増えてったって感じですかね。

【松野】なるほど。でも、なんとなくにしては結構な量ですよね。

【全員】(笑)

【松野】いやもう、いつも大島さんとこはすごいなーって思っているんです。種類があれだけ多いのに、野菜の一袋一袋に、品種の特徴だとか食べ方とか説明する紙を入れていただいているので、すごくありがたいというか、僕らからすると完成された商品なんですね。

【大島】マイナーな品種も一般の方に食べてもらおうと思うと、なんにも説明無いとなかなか手に乗ってもらえないですしね。

【松野】その中でも、好きな作物、得意な作物って、あったりしますか?

【大島】あんまり無いですね。入ってくるスタッフに希望の品目があれば、その人にそれを任せて、私は空いたやつ、埋まってないところをやるっていう感じです。で、やりだすとそれが好きになっちゃうんですよね。でも、私があんまり一つに没頭しちゃうと、いろいろ問題があるんで、また他の人に任して、自分は違うものをやって、またそれが面白くなって、という繰り返しです。

【松野】じゃあ、もう何でも来い、な感じですね。

【大島】まぁ、全部中途半端なんですよ(笑)

【松野】いやいや、そんなことないです。

【大島】一つに没頭できる人は、やっぱりそれを極めていくんでしょうけど、自分の場合は広く薄く、っていうところが今まであったんです。

【松野】いやいや、薄いとは思いません。あれだけの種類をあのクオリティで出荷するって、なかなかできません。では、最初は大島さんが作ってみて、栽培のコツとかポイントとかを掴んで、次に担当するスタッフに伝えてっていう感じですか。

【大島】そうですね。自分で作ってみると本当にいろいろ「あ、こうやったら良い。」っていうのが出てくるので、それが面白いと思うんですよね。

【松野】なるほどなるほど。

取材日: 2018/06/23

後編「有機農業とハウス栽培」に続きます。

代表・松野が聴く!生産者・大島さん 後編 – 有機農業とハウス栽培 –
代表・松野が聴く!生産者・大島さん 後編 – 有機農業とハウス栽培 –
有機野菜の生産者・大島太郎さんとの対談後編です。 ハウス栽培に取り組む大島さんに、そのメリットを伺いながら、将来の有機農業の可能性について、話を深めていきます。

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