オーガニック野菜を使う料理人から、お話を伺います。お店にこめられた思いから、有機野菜を使う理由、そして使い方のコツなど、お聞きします。
第7弾は、東京都武蔵野市にある ORCHESTRA のシェフ 浦住挙斗さんです。
「住みたい街ランキング」上位常連の吉祥寺にあるお店は、野菜たっぷりのお料理が美味しいのはもちろん、店名にちなんだ音楽をモチーフとする装飾やモダンなカントリー調の内装がカワイイ、連日女性客でいっぱいの繁盛店です。 (店舗の様子は最後にご紹介します)
【浦住】浦住さん
人気の理由 工夫されたランチと居心地
【浦住】はい、ランチが好評をいただいています。一般的には、夜のメニューを割安にして昼に出すっていうお店が多いんですけど、うちの場合はまったく違うメニューにしちゃっています。この方が、お客様が何を頼まれるかってわかるし、仕入れも個々の品目の量がまとまるので、調整や価格交渉もしやすいですね。
【浦住】やはり洋食屋さんだと、毎回パスタの鍋ふったりとか、肉を毎回焼いたりっていう手間が有ると思うんですけど、うちの場合もう全部、仕込み勝負にしちゃってあります。決められたもの何種類かを、大量、一発で用意しとくっていうところです。
【浦住】そうなんですよ。そこにご飯系のものが選べて、おかわり何杯でも自由なので…
【浦住】追加料金でアルコールも付けられますし。
【全員】(笑)
【浦住】ホントはね、マクミノルさんから良い野菜を仕入れさせてもらっているので、〇〇農園さんの△△スープとかグラタンとか、ランチでもやりたいんですけど、大量になっちゃうので…その分、夜の方で使わせてもらっています。夜の方が落ち着いているんです。売上もランチの方が全然あって。
【浦住】そうですね。まぁ吉祥寺が割と「昼の街」とは言われていて、そのせいもあると思いますが「あそこはランチ」っていうイメージが付いているのかもしれません。お店としては課題もあるんですが。
【浦住】はい、お客様にゆったり過ごしてもらう、というのがオープン当初からのコンセプトでした。主婦の方も多いので、地域に根ざして、そういう人達がゆっくりお食事を楽しみながら、おしゃべりも楽しんでもらえるような空間を作りたい、ということで時間制限は設けてないです。
【浦住】あ、もちろんあります。でも、オープンでランチ食べて、コーヒー・紅茶飲んで、そのうち「あ、もう6時だね。じゃあなんかパスタでも食べる?」みたいな感じの人も、たまにいらっしゃいます(笑)
【浦住】そう。そこがウチの強みかなって思ってるんですよ。
【浦住】大事ですね。やっぱり居心地の良さっていうのが、飲食店は基本中の基本になると思います。
【浦住】それ、当たってると思います。時代の流れでSNSが伸びていて、みんな視覚で、イメージとして捉えるんですよね。言葉も一緒で、ただのキャベツじゃんくて、〇〇県産の、なんちゃらキャベツ、って言ったほうが何となく美味しそう。人間って脳で食べているので、そう言われると「なんか違うかもね」「美味しいかもね」って結果、あ、美味しいってなる部分はありますよね。
有機野菜を仕入れる理由 – 付加価値
【浦住】正直言っちゃうと、時代だなってのが、やっぱりありましたね。母体が静岡にあるお店なんですけど、静岡でやってるときは、どれだけ安く仕入れられるか、っていうのが常でした。でも東京に出てくる時に、やっぱりそれだけじゃダメだろう、何か付加価値をつけないと、っていうところから、産地や食材のこだわりを強めることにしました。最初は地元静岡の農園さんから。富士山の麓の辺りとか、農家さんとお話させてもらって、仕入れさせてもらえるようになって、というのが始まりでしたね。
【浦住】有機でした。ただ、一農家さんなんで、種類は限られてるし、送料の問題もあったし、週に1回しか届かないし、もうちょっと便利にいけないかな?って思ってた頃にマクミノルさんとの出会いがあったんです。
【浦住】やっぱり前日発注で翌日届く、っていうのが、飲食店としては一番ありがたいですね。料理が出る数って読めないんで、うちの場合、ランチは割と読めるんですけど、「あ、この日いっぱい出た」「次の日欲しいけど、届くのは明後日だね…」って感じはありますね。まぁ八百屋さんとしても対応は難しいとこだとは思うんですけど。
【浦住】まぁ、生き物ですからねー
【浦住】都内だと特にそうなりますかね。
【浦住】はい。
卸業者が繋ぐコミュニケーション
【浦住】ん~
【全員】(笑)
【浦住】あ、いつも販売中の野菜のリストをいただくじゃないですか。あれに農家さんのイメージとか、できたら写真とかもあるといいな、と。で、その写真をそのまま使わせてもらって「今日のオススメ 〇〇産のトマト!!」とか店でやれたらいいなと思います。
【浦住】それ有り難いですね。
【浦住】あぁ、そうですよね!
【浦住】確かに確かに。
【浦住】なるほど。うちの実家のじーちゃんばーちゃんも農家で、まぁ何言ってるかわかんないですよね。
【浦住】まぁそれも込みなんですけど(笑)
特に有機農家って、普通に野菜を作る人じゃなくて、こだわりの強い、クセの強い人もいらっしゃいます。思い入れが強いのには、悪い面もあって、お客様に寄り添わないというか。
料理人で例えれば、お客様は色んな料理をちょっとずつ食べたいのに「これが旨いから、これ全部食えよ」って丼を出す、みたいな。自己満足でしかないですよね。
【浦住】うんうん、飲食店の人たちも、有機野菜をわざわざ使おうっていう人は、やっぱり個性が強い人達だったりするので、ぶつかりがちですよね。
街場で食べられるオーガニック野菜
【浦住】まず、見て美味しそうって思いますね。
【浦住】何だろうな…土がそのままついてるのとか…これはお客様に伝わるのかわかんないですけど、角々しくないっていうか、もちろん形がいびつなのも有るんですけど、それが何か温かいっていうか、丸みがあるっていうか、僕は思いますね。
【浦住】「あ、これマクミノルさんのだ」って思って箱を開けるから、って言うのも有るのかもしれないですけど、でもやっぱり活き活きとはしてますよね。
【全員】(笑)
【浦住】ちょっと話しがズレちゃうかもしれないですけど、それこそ「有機」とか「無農薬」とか「BIO」とか「クラフト」って、今は色々な表現がありますよね。半年前くらいから、クラフトビールを始めたんですけど、人気なんですよ。
【浦住】普通の生ビールより出るんですよ。系列店でも、クラフトビールを入れたところは同じですね。流行りも有ると思うんです。ウィスキーでもクラフトバーボンって言ってるCMがありますし、クラフトジンなんてのもありますよね。お客様がクラフトって言葉の意味をどこまでご存知かはわかりませんが「地域で作った、良いもの」っていうイメージはできていると感じます。先日に吉祥寺で「クラフト食器」といって長崎の波佐見焼を紹介するイベントがあったんですが、とても盛況でした。
【浦住】何かよくわかんなくなっちゃうんですよねー。
【全員】(笑)
【浦住】でも「有機野菜」というだけでは、珍しい言葉じゃ無くなってきています。
【浦住】1割あるかどうかじゃないですか?
【浦住】えぇーそうなんだ…
【浦住】1人1万円のコースのお店さんだと、その辺にこだわってるシェフが多いです。僕もたまに行くんですけど、この野菜はどこどこのオッチャンのカブで、とか、北海道の何とか村で作られてる何とかです、っていう説明があるんです。そういう人たちからすると、たぶん当たり前の世界だと思いますけど、この街場のウチみたいな価格帯のレストランだと、なかなか意識してないです。
【浦住】はいはい。
【浦住】なるほど。
【浦住】そうなんですよね。個人的には、肉ジャガ食べたいなーっていう時は、ジャガイモの美味しさを思い浮かべてたりとか、すき焼きを食べたら、やっぱり春菊って美味しいね、って感じてることが多いんですが…
【浦住】あぁ~!それこそ、お肉だと、高ければ高いほど美味しいってところがありますよ。価格の差が顕著に出るんですよね。安い焼肉屋さんに行くよりは、ちょっと頑張って1人5,000円~1万円ぐらいのお店に行くと、全然違う。
【浦住】で、野菜に関しては、例えば1個1,000円の白菜があったとしたら、もちろん食べたら美味しいんだけど「確かに、甘くて美味しいけど…うーん、1,000円か…」ってなりがちなジャンルですよね。
【浦住】なっちゃいがちなところありますね。
【浦住】欲しいですね。ただ飲食店で、そこまでの時間が取りづらい人が多いので…
お客様の記憶に残る野菜の色使い
【全員】(笑)
【浦住】野菜は好きですよ!さっきも言った春菊とか…長ネギも好きです。あ、最近はトマトも好きです。あとはエノキ…挙げていくとキリがないんですが。
【全員】(笑)
【浦住】そうですね、結局すき焼きが好きなんだな。おぉ、そういうことだ、俺すき焼きが好きなんだ(笑)
【全員】(笑)
【浦住】家でも料理するんですけど、その場合は使い勝手が良い野菜、余ったら別の料理に回せるみたいなのが、いいですね。
【浦住】生で使うことが多くて、お皿にパッて乗ってると「あ、何この野菜!?」ってなるものがいいですね。特にコリンキーは、すごい聞かれます。「何ですか、これ?」「かぼちゃなんですよ。」「え?かぼちゃなの?」って。
【浦住】お客さんにとって、わかりやすく「わかりにくい」そういうのは面白いですね。記憶に残る。飲食店側からすると、お客さんに何かしらの記憶を持ってもらわなきゃいけないんです。
【浦住】どこで記憶を残してあげるのか、味なのか、盛り付けなのか、野菜、肉なのか、お店によって色々やり方はあると思うんですけど、ウチは割と視覚で入ります。あのプレートランチも、いろいろちょっとずつ乗っかって、プレート1つで絵になって見えるから、記憶に残るし楽しいってなることを意図しています。
【浦住】料理によってお皿の色を変えたりします。お料理の素材の色が落ち着いてると、じゃあお皿を華やかにしようとか。でも華やかなお皿って、ちょっと高いから、普通のお皿でも大丈夫なカラフルな野菜が欲しいな、とか考えますね。
【浦住】もうすぐ6年。
【浦住】絶対にコスパが良くないと、お客様が入んないです。高級だけでもだめ、味が良いだけでもだめ、価格に対してシビアなお客さんが多くて、お得感を出していかないと生き残っていけません。
【浦住】波はありますけど、そこは何とかやってます。
【浦住】もともとのアイデアは社長なんですけど、静岡から東京に出てきて、最初からあのプレートランチでした。オープン当初の内容を今から振り返ると、全然、駄目だなって思うんですが、徐々に徐々にパワーアップして、ご好評いただくようになりました。だから生き残って来れたんだと思います。
【浦住】そうですね、やっぱり努力ですね。
有機野菜をもっと身近に
【浦住】今後やっていきたいのは、プレートランチでも、マクミノルさんの有機野菜を使って、何々野菜のナスと、〇〇産のネギのピクルス、って感じのを入れていきたいんです。ただ、一番のネックは価格がちょっと…もう少し使いやすい価格だともっと…まぁ難しいことはわかってるんですけど。
【浦住】そうですね。
【浦住】その間を取れるのが一番ですよね。
【浦住】安けりゃ良いってもじゃないですけど、やっぱそこは、ね。
【全員】ありがとうございました。
取材日:2018/11/28
今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
落ち着いた店内には、ゆったりとしたテーブル席があり、時間を気にせずくつろぐことができます。カウンター席なら、目の前に並ぶカワイイ雑貨を眺めるのも楽しいです。
Shop Info
ORCHESTRA(オーケストラ)
吉祥寺(JR、京王線)
詳しい場所や営業時間は、お店の公式サイトでご確認ください。
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