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ビオシェルジュが聴く!料理人・木下俊さん – 食材へのこだわりとオーガニック –

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ビオシェルジュが聴く!料理人・木下俊さん – 食材へのこだわりとオーガニック –

ビオシェルジュが聴く!料理人・木下俊さん – 食材へのこだわりとオーガニック –

オーガニック野菜を使う料理人から、お話を伺います。
お店にこめられた思いから、有機野菜を使う理由、そして使い方のコツなど、お聞きします。

第2弾は、神奈川県藤沢市にあるレストラン オーガニックグリル鵠沼海岸 の木下俊シェフです。

湘南・鵠沼海岸から少し奥まった閑静な住宅街に佇む一軒家レストランで、素材にこだわった創作フレンチを提供されています。(店舗の様子は最後にご紹介します

【木下】木下俊シェフ


出会いに導かれたオーガニックレストラン

― まず最初にお店を始めたきっかけをきかせていただけますか?

【木下】もともとは都内を中心に、ケータリングで出張シェフをやっていました。こっちの方、横浜方面にも来ましたし、埼玉とか千葉にも行きましたが、ほとんど都内です。事業は上手くいってましたが、そろそろお店をやりたいなって思うようになりました。そのタイミングで、麻布十番でお寿司屋さんをやっている友人に、ここのオーナーさんを紹介してもらったのがきっかけです。
初めて物件を見たのが5月で、8月オープンっていう超無謀なスケジュールで(笑)
普通の個人宅だったんですが、そこから厨房も作ってババババーンっと、ケータリングの仕事も入っていたので、並行でこっちの準備して、何とか間に合ってオープンすることができました。

― ― スゴイ!!

【木下】もう一つのきっかけが、松野さん(編者者注:取材当時のビオシェルジュ運営会社・株式会社マクミノル代表)との出会いなんです。
ケータリングの中でも自然栽培の野菜を使いたいっていうふうに思っていて、ファーマーズマーケットに何回か遊びにいっているうちに松野さんと出会いました。ちょうどお店のコンセプトを決める時期で、ここは緑が多い環境ですし、オーガニックにこだわったレストランに挑戦することにしました。

― ケータリングをする前は何をされていたんですか?

【木下】専門学校を卒業して、最初はホテルに就職しました。その頃から独立したいという思いがあったので、5年働いた後に辞めて、料理以外の人脈作りだったり、経営の勉強だったりをしました。そして26歳になって、いよいよ会社を作ってという時に、過労とストレスで倒れてしまったんです。心臓が45分間止まって、ホント、植物状態か、半身不随とか麻痺とか後遺症が絶対残るっていう風に言われていたんですけど、なにも後遺症なく生き返りました。

― 45分間って、かなり長い時間じゃないですか。よくぞご無事で。

【木下】はい。そうなんです。それで独立は2年ほど延期。知り合いの会社で働きながら勉強させてもらいました。それで、28歳からやっとって感じで、ケータリングの事業を始めました。ちょっと波乱万丈です(笑)

― えっ?28歳からケータリングを4~5年で、この店はオープンして2年ですよね…木下さんって今おいくつなんですか?

【木下】僕34になります。

― お若いですね!それでこれほどのお店を、っていうのは、すごい!

Youtubeでも学べる最先端の料理

― ホテルで働いた経験は、どうでしたか?

【木下】僕が働いたホテルは、味よりもスピード重視っていうところでした。けっこう冷凍食品も使ってましたし、食材へのこだわりは、あまり感じられませんでした。味は調味料で何とかするみたいな感じで、ソースをイチから作るとかも殆どなかったですし、肉をさばく所とか魚をさばく所とか全部分業でしたし、そこから上がってきたものを仕上げてお客さんに出すくらい。あまり料理の勉強はできませんでした。
ただハードだったので、もう体力と精神面が鍛えられたって感じです。

― じゃ、今のお料理の勉強ってどこで学んだんですか?

【木下】独学です。

― えっ、独学なんですか!?

【木下】ケータリングやって始めの2年ぐらいはそのホテルの延長でやっていたので、大した料理は作ってないんです。自分でヤバいなって思って、勉強しました。
最近はYoutubeとか発達しているので、勉強がどこでも出来ます。

― なんとYoutubeですか!それはプロが見ても、参考になるようなものですか?

【木下】そういうレベルのものがありますね。もうホント、こんなの普通の一般の人作んねぇだろっていう、そういう、シェフ向けのチャンネルがあったりします。

― へーーーーっ!

【木下】ただ、ほとんど海外のサイトで英語とかなので、それをこう、分かんない英語聞きながら、ううう~んって言いながら(笑)
まぁだいたいやっていることを見ればわかりますし、材料名とかは停止して調べれば分かるんで、何とかなります。

― 時代ですね~。

【木下】そう、すごいですよね。そういう風に、今は日本だけじゃなく、いろんな海外の情報が手に入るので、独学でも勉強ができるっていうのもあると思いますね。
時々は海外の本を買って勉強したりもしますが、便利な世の中になりました。

― でもその分、同じようなことをする人もいるので負けてられないですよね。

【木下】はい、そうなんですよ(笑) だから、それはそれで頑張らないといけないです。

自然栽培との出会いで変わった意識

― 時代とか世の中の流れでいうと、オーガニック野菜の使われ方はどうですか?

【木下】世界的に有名なレストランで食材にこだわっているお店だと、やっぱりオーガニックを使っているお店は多かったりしますね。海外の本を読んでいても、バイオダイナミック農法(編者注:ヨーロッパの一部で普及している有機農法・自然農法の一種)のニンジンを使って、とかありますね。
最近は世界的ににナチュラル指向が強いので、その土地の昔からの在来の野草とか、発酵食品とか、そういうのを食材として使うっていうのがかなり増えています。野草なんて、自然界にあるものなので、ほぼほぼ無農薬ですよね。

― 日本はどうですか?

【木下】いや~、もう相当浸透していると思いますよ。普通にスーパーに行ってもオーガニックあるし、その割合も増えてると思います。お客さんもけっこう詳しくなってますね、やっぱり。

― そうですね、こだわる人は増えましたね。野菜じゃなくても、大手の食品メーカーさんからも、無添加っていう商品が増えるようになりましたね。
あとはもう少し簡単に、普通に気楽に買える環境があると、もっといいなと思いますけど。

【木下】うん、そうですね。

― 木下さんご自身がオーガニック野菜を使うようになった、きっかけは何でしょう?

【木下】30歳の頃、友人から勧められた高野誠鮮さん(編者注:当時、石川県羽咋市の市役所職員として、限界集落の再生や自然栽培の普及で活躍された方)の本『ローマ法王に米を食べさせた男』を読んで、これはおもしれーな、この人すげーなって思って、で、ちょうどその時に羽咋市で映画『モンサントの不自然な食べもの』の上映会があるっていうので、その友人も一緒に行こっかみたいな感じで、車で、男二人・弾丸ツアーで羽咋まで行きました。
そこで高野誠鮮さんにお会いして、農家さんを紹介してもらって、っていうのがきっかけです。

― なるほど。じゃ、それまではオーガニックとかってあんまり意識したことはなく?

【木下】なかったですね。ただ、倒れた経験もあるので、食材、食べ物大事だなっていう意識はありました。
でも自然栽培っていうものに出会ってからは、味も良いっていうのもあったし、もっと食材をこだわっていこうって考え始めて、やはり体に良くって美味しいものを、って追求するようになったんですね。
ただ、ケータリングだと予算が限られているのが多かったんで、使いたくてもなかなか叶いませんでした。たまに使える時に、スポット的に農家さんから仕入れるくらい。
でまぁ、ここお店をやるにあたって、常に使えるようになりました。

有機野菜のいいところ

― 実際に業務で有機野菜を使ってみて、いかがでしたか?例えば味では?

【木下】美味しいですね!
ただ、減農薬栽培の野菜でも、美味しいものは美味しいですし、時期によっては使用することもあります。

― 慣行栽培(編者注:農薬や化学肥料を使う一般の農法)でも、農家さんが味重視で取り組まれているところだと、美味しいものがありますよね。逆に、オーガニックだからと言っても、土壌がまだ育っていないのかな?っていう所もありますよね。

【木下】はい。あれ?って思うときもありますね。

― 費用的にはどうでしょう?価格だけで比較すると、やはりオーガニックの方が高くなりますが。

【木下】そうですね、まぁ、大丈夫です。うちは、高いものを仕入れて安く出そうとしているわけではなく、ちゃんとお料理でそれなりの値段も取っているので、そこはあまり問題ありません。その価値をお客様にちゃんと分かってもらえれば良いと思っています。

― 保存した時の日持ちはどうですか?

【木下】日持ちは良いと思います。ものはやっぱり良いですよね。
ただそこも、農家さんによってけっこう違いますよね。この農家さんのは一週間してもまだ葉っぱがパリッとしているとか、あります。僕が今直接取引している、静岡の農家さんの野菜は、ものすごい生命力ありますし、ホント、朝、日の上がる前に収穫してっていうのをずっとやっているんだろうなって。

― うちの野菜は大丈夫ですか?

【木下】大丈夫です!

― ありがとうございます!でも、ダメなときは言ってくださいね。

【木下】はい(笑) たまに本当にダメなものは松野さんに言ってます。

有機野菜の困ったところ

― 有機野菜だと、食材の旬とか、出荷時期が限られる部分もあります。本当はこれを使いたいんだけど、無いから困ったなー、とかありますか?

【木下】それはもうしょっちゅうですね(笑)
世間のスーパーとかで慣行栽培の野菜が出る時期と、オーガニックの農家さんから来るものと、だいたい1ヶ月は差があります。

― 一般的なレストランだと、さらに季節を先駆けて、みたいな感じでメニューを出すところもありますよね。

【木下】そう、もうそんな料理出してるんだ!? でもうちまだ出せないんだよなー、とか。
でもそこは、オーガニックだから、季節が違うんだって、僕の自分で選んでるこだわりなので(笑)

― 現状では弊社は、注文お受けして中3~4日でお届けという形で、ちょっとご不便かけてないかな?って思うんですけど。

【木下】でも、だいたいそのくらい、じゃないですか。そんなに不便に感じているところはないです。

― ありがとうございます。とても助かります。他にご要望はございますか?

【木下】強いていうなら、品目がやっぱり多いに越したことがないです。いろんな品目があると、こっちも選べる幅が広がりますし、僕はけっこう変わった食材が好きなので(笑)

― 弊社の野菜リストに載せてない野菜もありますので、リクエストいただければ、探してお届けします。
農家さんの所で珍しい野菜を作っていても、数量が微妙というか、ある程度の注文が集中すると対応できないだろうな、という野菜は、なかなかリストに載せにくいんです。お客様の立場でも、リストにある野菜を注文したのに「無い」って言われるとストレスだと思いますし。

ですから「欲しいな」と思う野菜がありましたら、遠慮なくおっしゃってください。

素材を活かしながら驚きを与える

― 料理をしていく上での、こだわりをお聞かせください。

【木下】お客様には、やっぱ驚いて感動してもらいたいですね。
素材をあんまり手を加えずに、純粋に美味しさを味わってもらいたいっていうのもありますし、一方で、さらに僕の方で手を加えてこういう風にもなるぞっていう驚きも与えたいっていうのもあります。
でも、心がけているのはやっぱり食材の良さっていうか、素材の味を重視している部分はありますね。

― 確かに、さっきいただいたランチは、野菜だけじゃなくて、お肉もとても美味しかったですね。鶏肉はとても柔らかいし、熟成肉のハンバーグは香りが素晴らしかったです!

― 僕らも仕事柄、野菜だけは一流品が手に入りやすいので家でも食べてるんですけど、やっぱりまぁ素人なんで、生で食べるかちょっと焼いて食べるか、とかそんな感じなんで、やっぱりプロの方ってぜんぜん違うなっていうか。

― そう。ドレッシング一つにしても家で作るのとは全然違いますよね。ちょっとした一手間なのか、塩加減なのか、わかんないんですけど。うちの野菜もあんなに美味しく作り上げてもらって、本当に嬉しい限りです。

【木下】やっぱり感動してもらいたいので(笑)

― お客様は、近くの方が多いですか?

【木下】近くの方がほとんどですね。この辺は住宅地ですので、観光のお客様は、まぁちょこっとです。海沿いにリゾートホテルがあって、最近はそこと提携して、観光のお客様のご予約も増えてきました。あとは口コミです。

― では、健康志向でオーガニックを求めてきた、っていう方ばかりでもないんですね。

【木下】そうですね、半々くらいでしょうか。でも味と雰囲気で選んでいただけてるのだと思います。

― シンプルに美味しさで評価されているんですね。

【木下】この辺りは、古くて大きい家が多いのですが、最近はそういうのが潰れて新しい家が建って、若い人も入ってきて、と入れ替わっているところです。古い地元の人は、家族で、とか、ちょっとした集まりの時に使ってもらえたりします。

― お店の中の雰囲気とかもとてもオシャレでいいですよね。ここで結婚式とかしたら、良さそうですね!

【木下】はい。今月結婚式があります。今月頭に1件と、今度の週末が2件。なので、すごいたくさん野菜を頼みました(笑)

― ありがとうございます!

夫婦で美味しさを追求していく

― お住いはこの辺ですか?

【木下】住まいは東京なんですけど、今は、ほぼ住み込みで、単身赴任状態です。今、うちの奥さんも、4ヶ月ほど海外に行っちゃってるんです。妻は助産師で世界の助産の勉強って感じです。

― 奥様も食べることが好きなんですか?

【木下】もう大好きです。でも、こだわり始めたのは、たぶん結婚してからだと思うんですよね。一緒に食べに行く機会が増えて、お互いに追求するようになりました。
妻だけでも色んなところに行ったりとか、グルメな友人も増えたりして、なんか僕より顔が広くなりましたね(笑)
世間で活躍されてるシェフとか、僕よりたぶん顔広いです。

― お仕事としては良いですね。

【木下】独学でやってた分、まずは食べて勉強しなきゃいけないので、助かります。休みの日は有名なお店に食べに行くとか、ほとんど食費に投資しています。で、今、妻が海外で行ってる先々で、僕が食べてみたいお店を予約して調査してきてもらう、っていう感じです。

― そこがお願いできるのっていいですよね。

【木下】その分、料理への指摘が、とても厳しいですね。今でもまだダメ出しメチャメチャされます(笑)

― 将来やってみたいことは何でしょう?

【木下】やるっていうよりも、どこかに修行してみたいですね。ほとんど独学だったので、お店で修行をやりたいです。海外も行きたいですし、国内でも勉強したいレストランもあります。

― ジャンルはどういう方向で修行してみたいですか?

【木下】フレンチ寄りですけど、和食も勉強したいなって思いますね。やはり日本で、日本を表現する料理を作りたいです。

― 先ほど「素材の味を大事に」というお話もありましたが、和食はそのイメージがありますよね。

【木下】フレンチがベースにあっても日本の食材、日本の調味料、っていうので日本を表現した料理を作りたいという思いがあります。その上で、もっと自然の素材を使った料理とか、お皿とかにしても、石とか自然界にあるものを使うとか、こだわっていきたいですね。
どこかのタイミングで自分のコンセプトをさらに詰めたものをやりたいと思っています。

― 今日はお忙しいところありがとうございました。また美味しいお食事をありがとうございました。


取材日:2017/05/17

今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?

閑静な住宅街に佇む一軒家レストラン、雰囲気もお料理も抜群です。
ぜひ訪れて、素材を活かしたお料理、有機野菜の美味しさを味わってください。

Shop Info

オーガニックグリル鵠沼海岸

鵠沼海岸(小田急) 鵠沼(江ノ電)

詳しい場所や営業時間は、お店の公式サイトでご確認ください。
公式サイトへのリンクは ご利用実績 のページでご案内しています。

緑あふれる門と広い中庭の先に、一軒家をリフォームした店舗があります。
1階はレストラン、2階は食後に喫茶室として利用できます。

中はレトロモダンな落ち着いた空間が広がります。
調度品も時代を感じさせてくれます。

奥にあるカウンター席では、目の前で料理盛り付けていただけます。
食べる前から、ワクワク感がたまりません。

この日いただいたランチは、チキン・ポーク・ハンバーグの3種盛り合わせプレート。
スープ、自家製フォカッチャ(or 自然栽培玄米)、日替りデザートが付いて2,600円でした。

お野菜は、コリンキーのポタージュと、グリルしたニンジン、ジャガイモ、ゴボウ、特製ドレッシングのサラダと、お肉のソースにビーツが使われていました。
どれも、お野菜本来の味がしっかりわかります。

この他にも、魚は三陸のこだわり漁師さんから直接仕入れたものを使われているとか。
今度はぜひディナーでいただいてみたいです。

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