オーガニック野菜を使う料理人から、お話を伺います。
お店にこめられた思いから、有機野菜を使う理由、そして使い方のコツなど、お聞きします。
第4弾は、東京都恵比寿にある 茶菜CAFE 謝謝 のオーナーシェフ北村有藺(ゆい)さんです。
恵比寿駅から少し歩いたところ、こだわりの飲食店が集まる界隈で、オーガニックの中国茶、台湾茶と、素材にこだわった中国料理が楽しめるお店を営業されています。(店舗の様子は最後にご紹介します)
【北村】北村有藺さん
きっかけは台湾、香港の家庭料理との出会い
【北村】中国武術をやってまして…
【北村】ええ、それで中学とか高校の頃から合宿で、台湾とか、返還前の香港へ行くことがあったんです。特に台湾では、すごいローカルなところばっかり連れて行かれて、しかも道場で飯を食う、みたいなことが多かったんです。道場に、向こうの生徒さん達が家庭料理を持って来てくれる感じで、中華っていっても見たことないような料理を食べることが多くて、面白いな~と思ったのが一番初めのきっかけでした。
それから少しずつ自分の飯を作るようになって、あぁ料理って面白いな~っと思って、段々段々って感じです。
【北村】そうですね。その後、調理師専門学校に行って、和洋中、全部学んだんですが、最終的に中華料理を選びました。卒業してからは、いろんなお店で修行させてもらいました。最初は都内・上野のお店、次に沖縄のホテル、そこからまた都内に戻って渋谷のお店で働いたり店長やったりしてたんです。
そうしているうちに今のお店(茶菜CAFE謝謝)の物件が出てきて、独立しました。
【北村】2015年の8月ですね。もうすぐ2年です。
【北村】それ以前のお店では、部分的にしか使ったことがなかったんですけど、いろいろご縁があって、有機農家さんとか色んな人と知り合う機会があったんです。
親父の遥か後輩なんですけど、石川県の数馬酒造っていう蔵元で、こだわりの酒を造っている人がいて、そこで使っている「ゆめうらら」っていうお米の農家さんがオーガニック栽培だったとか。今の謝謝で使っているお米も「ゆめうらら」なんです。
あとは、好きでよく通った恵比寿の台湾茶のお店も、全部有機しか使ってないお店だったり。

【北村】そこが仕入れている生産者は頑固者らしくて、台湾の中でも、黙ってりゃ気付かれないだろうと思って農薬を撒いて知らん顔してる、みたいな人もいるんだけど、そういうのを見逃さないように、その親父は作業員全員が見える位置にいて、朝から晩まで監視しているっていう…
【北村】オーガニックの食材を使って、そういう農家さん達の助けになればいいかな、と思いました。それで新しくお店をやる時に、全部オーガニックでいこう、と決めました。さすがに調味料とかお酒まで、全部が全部とはいかないけど、少なくとも野菜は全部オーガニックにしようと。そこで業務用に卸売しているところを探していたら、松野さん(編者注:取材当時のビオシェルジュ運営会社・株式会社マクミノル代表)に繋がったんです。
オーガニックな中華料理が少ない理由
【北村】そうですね。部分的に使っている所はありますけど、本格的にやっているところは、たぶん数件あるかないかだと思います。
なぜか中国料理だと、そこまでこだわらない人が多いっていうのもありますが、大量に使う薬味系の野菜は通年切らさずに仕入れたいっていうのもあるでしょうし、あとはやはり調味料がオーガニックで揃わないっていうのはあります。
調味料を全部自作するつもりじゃないと、完全なオーガニックは無理だと思います。
【北村】そうですね。お客様から聞いた話ですが、オーガニック系と言われる中国料理の店に行ってみたら、オーガニック野菜をふんだんに使った料理に、思いっきり化学調味料を入れられてて、口が曲がりそうだったって。
高級店と言われるお店に行ってみると、やっぱり美味しいんですが、なんて言うのかな、素材の良いものと悪いものがゴチャ混ぜになってるというか…
【北村】化学調味料たっぷりで、一口目はいいんですけど、後から舌が痺れてくるというか…
【北村】ちょっとずつ色んな種類、っていうのが最近の流行りでもありますね。
【北村】ありがとうございます。
【北村】そういう人も多いですが、単に味だけで来てくれる人も多いんです。
【北村】恵比寿の栄えているところや、ガーデンプレイスからも、ちょっと離れているので、お客様は近くの会社の方が多いんですが、時々、違う方もいらっしゃいます。近くのお目当ての店に来たんだけど入れなくて、じゃこっちに、って来てくれて(笑)でも帰る時には「これから中華料理はここにすることに決めたから!」っておっしゃってくれて。
【北村】女性は、こだわる人が多いですね。
【北村】いや~、かなり大雑把なんですけど(笑)
やっぱり、卸してもらっているお野菜が良いというか、いろんな色のお野菜を入れてもらってるので。
【北村】ありがとうございます。
中華料理でオーガニックを実践する工夫
【北村】けっこう苦労してるんです(笑)
【北村】野菜に関しては、野菜自体が味を持ってくれているので、そこまで強い味を入れなくてもいいですね。あとは、甘味噌とかタレとかは、可能な限りは自作するようにしてるんですね。もちろん、全部の調味料は手が回らないですが、醤(ひしお)みたいなのは簡単に作れるのがあります。麻婆豆腐は、それを使ってます。
【北村】オイスターソースって、よく自然食品店で売っているのは、添加物を避けてるっていうだけで、言ってみれば中華の素人が作ってるような感じのものがあります。
添加物が入っていないオイスターソースだったら、ユウキ食品の「化学調味料無添加のオイスターソース」がいいですよ。あとは広島の会社が作ってる「オイスターエキス」本当にオイスターの濃縮エキスっていう感じのを、広島産の牡蠣で作っているところがあって、余計な塩味もなく、スッキリして美味しいです。
【北村】味に癖がなくて使いやすいっていうのもありますね。調味料の原材料まで遡って完全にオーガニックっていうのは、やはり飲食店で使うのは難しいです。
【北村】特に油をたくさん使う中国料理では、高級中華なら可能かもしれないですが、うちのランクでは難しいです。謝謝では、できるだけ抗酸化率が高くて、あっさりスッキリしている米油を使うようにしているんですが、それも圧搾方法までこだわったものは小さな瓶で3,000円もしますし、なかなか使えません。その上さらに原料の米がオーガニックかどうか?まで求められると、もうお手上げです。
有機野菜の素材を活かす 仕入れとメニューの工夫
【北村】美味しいと思います。
【北村】石川県の農家さんで、あの羽咋の自然栽培塾(編者注:石川県羽咋市で「奇跡のリンゴ」の木村秋則氏を迎えて開催された自然栽培実践塾)の受講生だった方がやってるところからも仕入れています。初めはお一人で300種くらい作ってらしたのですが、今は業務用に使えるように絞り込んで、それでも200種近く、お一人で作ってらっしゃいます。
ただ、石川からこちらに届くまでに時間がかかるのと、やはり季節で有るものと無いものがありますので、マクミノルさんと併用しているっていう感じです。
【北村】あとは、こっちにない野菜、こっちが終わった野菜を、あっちが持ってたり、というのもありますね。
【北村】基本メニューはあんまり変えてないです。おすすめメニューで季節のものを使ったりします。
【北村】無理に他所で買ったりとかはしてないですね。僕個人は年中ナスを食べたいとか思っているんですけど(笑)お店としては、そういうわけにいかないので、可能な限り、あるもので工夫しています。
一番は、ランチの蒸し野菜。

【北村】アレに入れるもので調整できます。
【北村】ええ、10種類以上は必ず入れるようにしているんで、仕込みは大変なんですけどね(笑)
【北村】昔いたお店で、あんな感じの蒸し野菜、ちょっと大きめで20種類以上の野菜を入れてて、2~3人で取り分けるっていうのがあったんです。それはそれで凄かったんですけど、あれをミニバージョンにして食べやすくしたら、と思って始めたんです。

【北村】仕込むのは大変なんですが、蒸すのはオーダーが入るごとやってますので、ぜひ食べていただきたいですね!
行き届いた店づくり そして中国料理からアジアへ
【北村】まずは、ここの体制をもうちょっと盤石にしていきたい。それで体に余裕ができたら、いろんな所に行ってみて、その場所や国の料理を取り入れていきたいかな、と思っています。中華だけにこだわらず。
【北村】なんだかんだで東南アジア系が一番好きなんだなっていうのはあります。ベトナム、バリ、タイ、ミャンマー、とか、インドですね。
【北村】お店を大きくするというよりは、できるだけ自分の手の届く範囲で、自分のやりたい方向性を充実させようと考えています。それをやりながら、アルバイトの子達や、社員になっていく人が、何かやりたいんですっていうのがあったら手伝ってやりたいな、とは思っています。

【北村】はい、興味あります。
あと、畑に行くと、農家さんが出荷リストには載せて無いけどこっそり作ってる野菜とか。
【北村】ありますよね(笑)
― 今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
取材日:2017/07/27
今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
10種類もの有機野菜のセイロ蒸しが付くランチは、お得ですし、シンプルな味付けで、野菜本来の味が楽しめます。「オーガニック野菜って本当に美味しいの?」という方は、ぜひこちらでお確かめください。
野菜だけでなく、調味料や油にまでこだわる北村さんのお料理は、優しい味付けなのに物足りなくない、しっかり中華の味がするのに後でもたれない、絶妙なバランスです。
ぜひ一度、お店でお試しください。あなたの中華料理へのイメージが変わるかも!?
Shop Info
茶菜CAFE 謝謝(シエシエ)
恵比寿(JR 東京メトロ)
詳しい場所や営業時間は、お店の公式サイトでご確認ください。
公式サイトへのリンクは ご利用実績 のページでご案内しています。
落ち着いた色合いの店内に
カウンター席とテーブル席
合わせて14席ですので
ご来店前に電話された方が確実です
カウンターには
こだわりの茶器も
本文中でご紹介した前菜盛合せ、
エビマヨ、季節の野菜のセイロ蒸しの
他にも、美味しい料理がたくさん
取材は真夏でした
旬のハグラウリを特製タレで
このタレはゴマ油と自家製の醤から
さっぱりとした瓜にコクと旨味をプラス
野菜たっぷり黒酢酢豚
こってり濃厚な味付けでも後味スッキリ
調味料と油にもこだわったオーガニック
中華料理ならではの味わいです
ランチメニューにもある柚子風味鶏そば
旨味の強い鶏スープ
特にラーメンは化学調味料を使う店が
多いのでありがたいですね
夏は冷やしでいただけます
夏の回鍋肉
豚と野菜の炒めものですが
自家製甘味噌がメインに使われており
しっかりした味付けながら後味スッキリ