オーガニック野菜を使う料理人さんとの対談企画・第一弾、菅原ご夫妻の後編です。
前編 では、お店にこめられた思いと、有機野菜を使う理由から、食事と身体の関係に話は広がりました。
後編では、食事と身体の関係に続き、都会におけるオーガニックのあり方と、将来の夢について語り合います。
最後に店舗の様子もご紹介 いたします。
【菅原ひ】菅原裕之さん
【菅原ま】菅原雅世さん
「普通」が店のスタイル
― お店は今年(2017年)で10周年ですが、10年やってどうでした?
【菅原ま】10年の間に中目黒がすごく変わっちゃったの。うちの場合は駅から遠いけど、開店当初はこの商店街しかなかったので、周辺オフィスのランチ客でいっぱいっていう状態だったの。
でも目黒川沿いにオシャレなお店が出始めて、話題になって、こっち側のお客さんが減っちゃった。そんで、そのあと3.11、みんな家から弁当を持ってくるって感じになって、さらにガタンと減ったね。
ただ、うちは開店当初から弁当の販売もやってたの。それがちょうど3.11のちょっと前から伸びてて、一旦減ったんだけど、持ち直すのが早かった。
【菅原ひ】最初は弁当を箱に入れて、自転車で渋谷の駅前に売りに行ったの。
【菅原ま】うちの料理って、特別じゃないんです。食べて普通。でも結構喜ばれるんです。
普通、普通って結構実はいいんじゃないかって思ってて。
― こういう食事って、そうだと思いますよ。普通じゃないと、続かないですし。
【菅原ま】なんかこう、かっこいい名前でもなく「和風あんかけ」とか「ベジなんとか」ってね。わかりやすいことをやってて、それがなんか、うちにはすごくあってたみたいでね。
【菅原ひ】あんまりこう、盛り付けがキレイでも、スイーツがすごい芸術的でもないし。それはうちがやることじゃないんだよね。
どっちかって言うと、電話かかってきたらバーンと作ってドーンと持ってく、みたいな、そういうのもやりつつお店もあって、その向こうでは、涙流しながら雅世さんのセラピーを受けてる人もいたりして(笑)
まぁのんびりやってます。
お弁当はおかげさまでご好評いただいていて、あっちこっちに行ってます。
必要な食べ物は身体が知っている
― この辺だと、芸能関係のお客様も多いでしょ?
【菅原ひ】家にテレビが無い生活なので、知らないっていうか、気づかないんですよね。ただ、スタジオから弁当の注文をいただくし、背格好からしてモデルさんだな、っていうのはわかるようになりました(笑)
【菅原ま】モデルさん達には響くみたいですね。弁当を一回頼まれると、だいたいリピートになります。
― モデルさんって、身体をキレイに保つのは、死活問題ですからね。ダルビッシュ投手みたいなスポーツ選手もそうですけど「食事も仕事」って考えて、身体を意識しながら食べるし、それが続く。
一般の人の中には、食事を、エネルギーをチャージする程度にしか思ってない人が多いように感じます。
【菅原ひ】だからコンビニのカップラーメンでも、エネルギーなんとかゼリーでも、いいんだよね。入れば。お腹いっぱいになれば。
― いいんです。平気なんです。お腹いっぱいになって、気分が悪くなったとしても、それはもう脳みそがごまかせちゃう。
【菅原ひ】味わって食べるっていう行為、感覚ってすごく大事だと思います。
食べ物が入ると、胃でぐちゃぐちゃにされて腸に行って消化されるわけじゃないですか。そのときにいろんなセンサーが働いて、必要な消化液を出すっていうシステムがあるらしいんです。
これは想像ですが、どの味で、これはなにが使われてて、この野菜はなにでっていう情報を、アタマで理解して無くても、舌とか食道とかが感じて、言語化されない情報がすでに体に行ってて、そっから消化液の製造が始まってる気がするんですよね。
― そうだと思いますよ。
【菅原ひ】昔の人は「よそ見して食べるとどっか入っちゃうかわかんない」って言ってたけど、あれも、あながち間違いじゃないのかなって。
だからよく噛んで味わって食べるのが大事な気がします。
不味いとかって思いながら食べたりとか、もう忙しいから食っちゃおっとかって思いながら食べると、何%かは体の栄養にならない気がする。
― その感覚は、わかります。子供の頃、親から「不味くても薬だと思って食べなさい」とかよく言われたけど、あれ嘘だと思ってます(笑)
食べたくないんだったら食べても栄養にならないんだ、って思うんですよ。
逆に栄養になるもの、変なものが入ってないものは、身体が美味しく感じるはずなんです。
【菅原ひ】ほんとにそうだと思う。
― そこを言葉で、脳みそに伝えても、あんまり意味ないので、いろいろチャレンジしています。
その中の1つは、僕は価格だと思っています。
今は、まだ僕らの会社も体力がないので、ちょっと高めの価格になってしまうんですけど、もしこれが普通の野菜と同じ価格で並べることができたら、お客様は間違いなく、オーガニックを選ぶと思うんですよ。そこまで持っていけたら、絶対に勝てるので、みんなの努力でなんとか近づけていきたいですね。
オーガニックだから高くても仕方ないよね、と単なる言い訳には、したくないんです。
だから、農家さんでも、ただ高く売りたいだけでオーガニック、という方とはやりたくないんです。
農家さんにもインタビュー行ってますけど、やっぱり後ろに物語があって、どういう理由で無農薬にしてます、っていうのを喋っていただける人から仕入れるようにしています。
オーガニックで都会を耕す
― そうやって思いを持っている農家さんが多いので、それを伝えるのが僕らの役目だと思います。流通が発達した世の中なので、本当だったら、僕ら中間の業者の仕事って要らないのかもしれない。
でも、お客様から農家さんにこうして欲しいとか、逆に農家さんからお客さんにもこうして欲しいとか、そこには良い話も悪い話もあるので、当事者同士だと揉めることもありますよね。
間に僕らがいるから、言いやすいってあると思うんです。そこに存在価値があるかなと。
【菅原ひ】そういう意味で言うと、細かいコト、全部任せたいわけよ。
それこそ僕らが野菜の勉強して、今の季節は何でどの地方に何があって、って勉強を頑張るよりも、それより早く料理作って配達したほうがいいじゃない。
そういう意味でマクミノルさんには、一所懸命に農家さんを回って野菜の話を聞いてもらいたい。僕らとしてはね。
僕ら都会育ちで、実はあんまり土とか好きじゃないの。こういうお店をやってると、いずれは田舎に移住して自分で農業してっていう人が多いけど、僕らは全然思わない。
【菅原ま】虫怖いもの。今でもたまに出てくるとギエ~って言うんだよ、厨房の奥から。
― へー、珍しいですね。でも「自分で農家やる」って人は多いですけど、簡単ではないですよね。
【菅原ま】だってたいへんだもん。あたしムリだよ。
【菅原ひ】それこそ畑が違うっていうか、餅は餅屋で。
北海道で農園やってる知り合いがいて、もともと東京の人で、自転車で北海道に行ってそのまま40年住み着いちゃった人なんだけど、彼に「僕はここ、東京でこういうことをやるのも大事だと思うんです」って話したら、彼も「もちろん、そうですよ」って。「自分たちは北海道の畑を耕す、みなさんは都会を耕してください」って。
その通りだと思うんです。都会の存在意義って、絶対あると思うんです。
全部田舎行っちゃって、もしくは全部アスファルト引剥して土にして畑や森にすればいいかっていうと、そういうことじゃない気がして。
僕ら東京生まれ東京育ちで東京大好きだから、持続的にみんなで楽しく住める東京、地球の中の東京っていうのを作れる気がするから、僕たちは東京を耕すのが仕事かなって思ってる。
― おっしゃる通りだと思います。都会には色んな人が集まるとか、ちょっと変わった人にも居場所があるとか、情報発信だとか、そういった役目や魅力があります。でも、環境とかオーガニックにハマる人の中には、都会を全否定する方もいらっしゃいますよね。
【菅原ひ】オーガニックとかマクロビとか、本来はバランス良く生きていきましょうって話しなのに、善悪で考えてたり、不寛容になってたりする人がいて、もったいないなって思います。
オーガニックを「普通」にしたい
― 最後にお二人の夢っていうか、将来こうしたい、というのを聞かせてください。
【菅原ひ】チェーン店。ファーストフードチェーン。
【菅原ま】そうそう、オーガニックなファーストフード。手軽で安くてオーガニック。
― いいですね。そういうのホントにやってほしいです。もっと手軽な。
【菅原ま】日本ってさ、あんかけとかっててあるじゃん。
野菜のあんかけって美味しいじゃん。私なんかあんかけって好きなの。
カレーもさ、あんかけじゃん。まぁ、あんじゃないけど。
― さっきからずっとあんかけあんかけって言ってますけど(笑)
【菅原ま】あーいう、こう、ぽこってご飯に乗せるさ、クリームシチューなんてあんかけみたいじゃない。あーいうファーストフードって早くて良くない?で野菜もいっぱい入ってて。
そういうのやりたい。
― ぜひやってほしいです。
外で子供に食べさせる手軽なものってなかなかないんですよね。急にマ○クになっちゃうし。
牛丼並の手軽さで、子供がパッと食べられて、結果それがオーガニックっていうの。
【菅原ひ】そういうのが普通にならないとね。
― その時も、野菜は弊社から、よろしくお願いします!
本日は長い時間ありがとうございました。
取材日:2017/04/14
今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
前編でも、ディープなお話を伺っています。併せてご覧ください!
RAINBOW BIRD RENDEZVOUS(レインボーバードランデヴー)
中目黒(東京メトロ)
詳しい場所や営業時間は、お店の公式サイトでご確認ください。
公式サイトへのリンクは ご利用実績 のページでご案内しています。
中目黒駅前から続く目黒銀座商店街の奥、落ち着いた雰囲気の一角にお店はあります。
店内は明るく、暖かな色合いで迎えてくれます。
奥にはパーテーションで仕切られた、雅世さんのセラピーコーナーもあります。
ランチは、日替りベジ惣菜がメイン。
最初の写真はベジ惣菜盛合せプレートで、玄米とスープがセットです。
この日のメインはテンペのナゲットと、対談にも出てきた大豆ミートの鳥唐揚げ風でした。
プレートの他に、丼仕立てのボウルも選べます。
次の写真は、ランチのレギュラーメニューのベジカレー。
スパイスが効いたパンチのあるお味です。
最後の写真は、菅原さんが試行錯誤を重ねたビーガンソフトクリーム。
牛乳製品をまったく使わないのに、しっかりコクがあります。
メープルの優しい甘さと香りも美味しい、普通の人も満足できるスイーツに仕上がっています。
ここに来たらぜひ試してほしいデザートです。