分類:ウリ科カボチャ属
名称:zucchini(米)、courgette(英/仏)、 zuchina(伊)、ズッキーニ(日本)
ズッキーニはイタリアの「カポナータ」やフランスの「ラタトゥユ」に代表されるように、地中海沿岸地方でよく利用されている一年草の野菜で、学名は Cucurbita pepo var. melopepoといいます。日本では、1980年代後半のイタリア料理がブームになった頃から一般的に出回るようになりました。
イタリア語の「小さいカボチャ」という意味が名前の由来で、カボチャを意味する「zucca(ズッカ)」に「小さい」という接尾辞をつけて「zucchina(ズッキーナ)」となりました。
ズッキーニの旬は初夏~夏で、産地は長野県と宮崎県が主に占めており、次いで群馬県、千葉県となっています。宮崎産は主にハウスものが、長野産は主に露地ものが栽培されています。
概要
ズッキーニについて調べてみると、たいがい「見た目はキュウリに似ていますがカボチャの一種です。」と記されているとおり、キュウリはウリ科キュウリ属であるのに対し、ズッキーニはウリ科カボチャ属。ペポカボチャの一種で、別名「つるなしカボチャ」ともいいます。
通常のカボチャとは異なり、完熟してから収穫するのではなく、開花後5~7日の未熟なうちに収穫して出荷します。
実のなり方は種類によって若干異なりますが、キュウリやカボチャのようにツルや枝からぶら下がるようになるのではなく、主茎から斜め上に向かって伸びるように成長します。ちょうど枝が伸びるのと同じような感じです。
一般的に市場に出回っている大きさは15~20㎝ほどですが、実際には1mくらいの大きさまで育ちます。大きく成長したものも食べることができ、輪切りにしてソテーにすると甘味が増して非常に美味。ただしこちらは繊維が多くて固いため生食には不向きです。
ただ時期や大きさに限らず、収穫後のズッキーニは追熟することなく時間の経過とともに中身がスカスカになってしまうので、新鮮なうちに食べることをおすすめします。
食感や味についてはナスに非常によく似ているため、一般的にナスと同じように調理されることが多いです。
現在最も多く栽培されているタイプは緑色をしたズッキーニですが、その他に黄色や白色、薄緑色のもの、形状も細長い棒状のものや丸形をしたもの、UFO形のものなどさまざまな種類があります。またズッキーニの花には雌花と雄花がありどちらも食すことができるため「花ズッキーニ」として流通しています。なおイタリアでは雌花の方が美味しいと言われ、雌花のみ食されることが多いそうです。
焼いたり、炒めたり、揚げたり、煮込んだり、ピクルスにしたり、、、と、どのような調理方法でも美味しくいただけますが、出回る時期によってオススメの食べ方が異なります。
走りの時期のズッキーニは繊維が柔らかいので生でも美味しいのが特徴です。ただし輪切りするとアクが出やすいため、繊維に沿って切ることをおすすめします。
終わりの時期のズッキーニは繊維が固くなり、また種も目出つようになるため、生食よりも加熱向きです。こちらは繊維を断ち切るように輪切りなどにした方が食べやすくなります。
歴史
原産地は北アメリカ南部からメキシコで、巨大なカボチャが原種と言われています。
野菜としてのズッキーニの歴史は浅く、ヨーロッパから米国へ渡って来た移民が栽培を始め、その後16世紀頃にヨーロッパ、主にフランスやイタリアへ伝わり、幾度となく品種改良や選抜が行われたのち、19世紀後半から20世紀に入ってから本格的に普及されるようになったと言われています。
日本での歴史はさらに浅く、伝わってきたのは第二次世界大戦後ですが、当初はあまり普及せず、1980年以降のイタリア料理がブームになったのをきっかけに急速に広まりました。
癖がなく調理しやすいことから、現在ではここ20年ほどの間に収穫量が約5倍も増加し、一般的な家庭料理でも使用されるほど人気野菜の1つとなっています。
種類
ズッキーニは主にキュウリを大きくしたような緑色のタイプが一般的ですが、他にもとてもユニークな形状をしたもの数多くあります。
グリーン
ズッキーニの代表と言えばこのグリーンタイプ。まるでキュウリのお化けのような形状をしています。同じグリーンのタイプでも、色は薄い緑色をしたものから黒っぽい緑色のものまで様々な種類があります。育ちすぎると味が落ちるため、通常は開花後5日ほどの長さ20㎝、果実直径4㎝位の未成熟な状態で収穫されます。
主な品種としては皮の色が濃緑に淡緑の霜降り斑がある「ダイナー」、濃緑色の「グリーントスカ」、黒緑色の「ブラックトスカ」や「ラベン」、ライトグリーン色の「ゼルダオリーブ」など。
主にイタリア料理やフランス料理などの西洋料理に使われることが多く、新鮮なうちは生でも食べられます。肉やチーズなどを詰めてオーブンで焼いたり、フリットにしたり、カポナータ等の煮物にしたりなど、さまざまな調理方法に向いています。
イエロー
皮・果肉ともに美しい黄色をしているタイプで、味は癖がなく淡白です。またグリーンのものよりも小ぶりで、皮は薄く柔らかいのが特徴です。グリーンのタイプと同様、開花後5日ほどの長さ15~20㎝、果実直径4㎝位の大きさで収穫して出荷されます。
主な品種としては皮に艶のある濃黄色の「オーラム」、鮮やかな黄色の「イエローボード」などがあります。
グリーンのタイプと同じように、焼いたり、煮たり、炒めたりなどでも美味しくいただけますが、肉質が柔らかく、彩りが鮮やかで美しいため生のままサラダで食べるのがオススメです。
丸形ズッキーニ
丸形ズッキーニは、まん丸な形をしたものやたまご形をしたもの、緑色のものや黄色いものなど形や色のさまざまなものがあり、いずれも開花後3~5日とかなり早くに収穫が可能になります。また収穫に適した大きさは品種によってまちまちで直径5~15㎝ほど。味は定番の細長い棒状のズッキーニと基本的に変わりませんが、果肉はみずみずしく、また量はこの丸形の方が多いです。
主な品種のうち、まん丸形のもので鮮明な黄色をしたものが「パリーノ・ジャッロ」、ライトグリーン色のものが「パリーノ・オリーブ」、濃緑色で光沢のある「パリーノ・ネロ」です。またたまご形のもので光沢のある鮮やかな黄金色をした「ゴールディー」、薄緑色をした「グリーン・エッグ」、濃緑色の「ブラック・エッグ」などがあります。
調理方法は定番の棒状ズッキーニと同じですが、果肉をくり抜いて肉などを詰めるなど形を活かした料理もオススメです。
UFOズッキーニ
平たい円盤型、いわゆるUFOのような変わった形をしたズッキーニです。開花後4~5日で収穫します。果実直径7~8㎝ほどが食べ頃サイズです。見た目はずいぶんと不思議な形をしていますが、味的には定番のズッキーニと変わりません。
主な品種としては、もっとも多く栽培されているのが緑がかった白色の「カスタードホワイト」で、その他、緑と淡い黄色の2色からなる「グリーンスター」、緑色の「グリーン」、黄色い「サンバード」、爽やかな淡いライトグリーン色の「ベニンググリーンティント」などがあります。
調理方法は定番のズッキーニと同じですが、形を活かして果肉をくり抜いて肉やチーズなどを詰めた料理がおすすめです。なお、小さいサイズであれば生のまま形がわかるよう横にスライスすると華やかで可愛らしいサラダになります。
花ズッキーニ
花ズッキーニは、果実が成長する前の開花直前に収穫した花付きの幼果、または花そのもののことです。ズッキーニの花には雄花と雌花とがあり、実をつけるのは雌花のみです。実を収穫すると花はすぐしおれてしまうことから流通が難しく、花付きズッキーニとして出荷される雌花は高級品とされています。
花ズッキーニの主な品種は、果実に縦縞がある「イタリアンストライプ」、細長い棒状で果実部分は輪切りにすると星型の「ステラ」、花専用で果実はほとんどないタイプの「ダ・フィオーレ」、ナッツのような風味がありズッキーニの中でも最も美味しいといわれる「ロマネスコ」などがあります。
花の中にチーズや肉、魚などを詰めたものをソテーしたり、蒸したり、フリットにしたりという調理方法が一般的です。
その他変わり種
ズッキーニは他にも風変わりな面白い形状をした品種がたくさんあります。
たとえば「グリーンパンツ」はその名のとおりまるで緑色のパンツを履いているようで、上部は鮮やかなレモンイエロー、先の部分が薄いグリーンといったツートンカラーのズッキーニです。他のズッキーニよりも甘味が強く癖がないためどんな調理にも向いています。
「イボイボズッキーニ」もその名のとおり外皮がゴーヤのようにイボイボボコボコしているズッキーニです。正式名称は「ルゴーサ・フリウラーナ」。「ルゴーサ」はイタリア語でチリメンという意味、「フリウラーナ」はイタリアの地方の名称で、ヴェネツィア・ジュリア州フリウリ地方で出回っている品種です。見た目は少々グロテスクですが、味はとても美味でベビーコーンのような風味があります。煮崩れしにくいため煮込み料理に向いています。
栄養・食養
「栄養がない」と思われているズッキーニ。でもそんなことはありません。ここでは多く含まれている代表的な栄養素についてご紹介します。
むくみ対策に効果的なカリウム
ズッキーニにはきゅうりやトマトなど他の夏野菜よりも多くのカリウムが含まれています。
塩気の多い食事などでナトリウム(塩分)を摂り過ぎるとむくみや高血圧につながる可能性が高くなります。カリウムは摂りすぎたナトリウム(塩分)を汗や尿として排出してくれる働きをしてくれるので、むくみが解消され、また血圧が低下して高血圧の改善に効果的です。
ただし、カリウムは熱や水に弱く水に溶け出してしまう性質があります。煮物やスープなど加熱する調理の場合は、食材と煮汁と一緒に摂ることをおすすめします。
なお、通常はカリウムを過剰摂取しても体外へ排出されるため特に問題はありませんが、腎機能が低下している場合や、腎臓に障害がある場合は注意が必要です。
カボチャ属に多く含まれるベータカロテン
カボチャには多くのベータカロテンが含まれています。ズッキーニもカボチャ属なので例外ではなく、他のカボチャよりは劣るもののやはり含有量は多いです。
ベータカロテンはカロテノイドの一種で、強い抗酸化作用があり体内に発生した活性酸素を除去してくれるため、動脈硬化や心筋梗塞、ガンなどの病気を予防する効果があり、老化防止にも役立ちます。
実はこのベータカロテンは体内に入ると小腸で必要な分量だけビタミンA(レチノール)に変換されます。ビタミンAには皮膚や粘膜を正常に保つ効果があり、肌の新陳代謝を促して肌に潤いを与えたり、粘膜が正常に保たれることで感染症を予防し、免疫力を高められます。また、目の健康を保つためにも重要な栄養素で、ビタミンAの作用により目の角膜を正常に保つことができ、眼精疲労やドライアイ、夜盲症の予防効果があります。
なお、ベータカロテンは熱に強く油との相性が良いため、生で食べるよりソテーや揚げ物など油と一緒に調理したほうが吸収力がぐんっとアップします。
ダイエットに最適な低カロリー・低糖質
ズッキーニはカロリーがかなり少なく、さらにとても低糖質な野菜です。カロリーは1/2本辺り(約100g)に14kcal程しかありません。
また糖質については1.5gほど。同じカボチャ属の西洋カボチャは100g辺り17gもあり、また他の代表的な夏野菜のナスは8.3g、トマトは3.1g、一般的に糖質が少ないと言われているキュウリは2g、オクラは1.9gですので、それよりもさらに少ないのです。
食べごたえがある上にカロリーも糖質も低いズッキーニは、まさにダイエットする人にオススメの野菜です。
ズッキーニあれこれ
ズッキーニで食中毒 !?
大変まれなことではあるのですが「ズッキーニを食べて食中毒を起こした」という事例が過去にあります。
ズッキーニを始めとするきゅうり、カボチャ、メロン、スイカなどのウリ科の植物には「ククルビタシン」という苦味成分が含まれています。通常、その含有量は微量なため気にするほどのことではないのですが、まれに異常に多く含有していることがあります。この成分を多く摂取した場合、下痢や嘔吐、腹痛など食中毒に似た症状を起こす可能性があります。
このため、もしズッキーニを食べて異常なほど苦味や渋みを感じる場合は、それ以上食べるはやめたほうが無難です。