代表・松野が聴く!生産者・石川さん 後編 – 有機野菜の流通を考える –

有機農業の生産者さんとの対談企画・第一弾、石川憲一さんの後編です。

前編 では、オーガニック農家の経営について、新規就農者へのメッセージも込めて、熱く語っていただきました。


後編 では、オーガニック野菜の流通、理想の市場から、都市と地方の交流まで、話は広がります!
聞き手は引き続き、弊社代表の松野です。

有機野菜が広まっているのを感じる

【松野】慣行農業(編者注:農薬や化学肥料を使う一般の農業)と、有機栽培との違いを感じる部分はありますか?

【石川】2016年に浜松で泊まり込みで開催されたラブファーマーズ・カンファレンス(http://lovefarmersconference.com/)で、金子美登さん(編者注:かねこよしのりさん。埼玉県小川町の霧里農場代表で、戦後の有機農業の先駆者)が講演で「今日、みなさん体調がいいでしょう?昨日の夕食だって今日の朝食だって、ここには有機の食材しかありませんからね(笑)」とおっしゃってましたが、そういうのは実感としてあるんですよね。
確かに、ちゃんと作られた有機の作物を食べていると体が元気になるんですよね。
ジビエでも言いますよね。肥育した豚肉よりも、野生のイノシシを食べた方が、体にいいと言いますよね。
それと一緒なんです。

もう一つが、戦後、農協が主導して広めた慣行農業は「農業の工業化」なんですね。
同じ規格の同じものを同じ値段で同じ時期に作りましょうと。そして、できれば一年中作りましょう、そうしたら高く売れますよと。
でも農業って工業じゃないですから、無理があるんですね。
それを続けるうちに、カウンターカルチャーじゃないですけど反対する人も出て来て、40年くらい前から有機農業をやる人が少しずつ出て来て、やがてそれが消費者の間でも「こっちの方がいいぞ」と食べる人が徐々に増えて来たと感じています。

特に変わったと感じるのは、震災の数年前ぐらいからですね。
アースデイマーケット(http://www.earthdaymarket.com)が2007年からですよね。
あれが始まったことで、世の中の有機に対する見方がコロっと変わったと感じます。
その前から世の中に求める流れはあったと思うし、私たち生産者も、ヨーロッパや東南アジアでは普通にオーガニックの市場があるのに、なんで日本にはないんだろうね?という話をしていた頃だったんです。
そういう流れの中でアースデイマーケットが立ち上がって、1年目からすごい話題になりましたよね。
あれを見て、有機農産物の小売店や流通をやろうと思った人や、使ってみようという飲食店が一気に増えました。彼らは画期的だったと思います。

特に若い人たちの意識が変わって来たように感じます。
アースデイマーケットが話題になって、最初の頃のお客様にはファッション方向の感度が高い方や、マニアックな食通の方が多かったのですが、そのうちに若い子育て世代の方、言い方は悪いですが、お金を持ってなさそうに見える普通の方が来てくれるようになりました。
普通の人が、他の買い物を控えてでも、こっちの野菜を買おうよという意識で来てくれていて、感激しました。
そういう人たちがどんどん来るようになりました。そういったお客様は、今になっても来てくれていますね。
その後、震災もあって、世の中が変わりましたね。都会から田舎に移ってやっていこうという考え方の人も増えましたね。6年経って落ち着いては来ましたが、確実に流れは変わったと思います。

【松野】僕自身は、震災があったのと、その後に子供ができたことで変わりましたね。当然ですが、子供は食べ物を食べて育つわけで、与えるものはちゃんとしたものにしたいな、と思うようになりました。
我々がまだ幸せなのは、そういう農産物に出会える機会が増えたこと、ネット販売や、都内だと自然食品店も増えて、目にする機会が増えましたね。

【石川】自然食品店も、一時期は減りましたが、また最近になって新しく始める人が増えましたね。
レストランをやりながら、店で使う食材を店頭で売る、という形がいいように思いますね。

【松野】確かに、カフェと店舗が併設しているような形は、いいですよね。
「この料理のこの野菜おいしいね」「じゃ次は多めに仕入れて売りますよ」という形だと、無駄が出にくいです。

農家も食べ方を提案していきたい

【石川】僕らも野菜を売るだけじゃなくて、食べ方を説明することが増えて来て。その方が売り上げも伸びますね。
クレソンなんかまさにそうです。ステーキの付け合わせやサラダにちょこっと乗せるだけじゃなくて、炒めても美味しいとか。スープにしてもいいですし、クレソン鍋なんて最高に美味しいです。

最近試したのは、クレソンの茎のピクルス、これが美味かったですよ。
クレソンを出荷する時に切り落とした根元の方、これを塩で漬けた後、甘酢に漬け込むと、おつまみに最適でした。クレソンの香りも残っています。

【松野】食べ方を紹介するっていうのは、大事ですよね。

【石川】先日、視察に来られたお客様と交流会をする時に、紅菜苔(編者注:中国野菜で茎が赤い菜花)のピクルスを作って出したんですよ。
すごい食べてもらえましたね。

【松野】美味しそうですね~彩もいいし。

【石川】そうやって、食べて美味しいと思ってもらって買ってもらう、っていうのが一番いいですね。

今年はザーサイ(こぶ高菜)を作ろうとチャレンジしました。ザーサイとして食べるのも美味しいんですけど、これの「菜の花」もめちゃくちゃ美味しかったんです。
ほろ苦くて、ちょっと油で炒めるのが美味しいですし、塩漬けにするとザーサイの風味もします。
数も取りやすいので、これは新しい商材としてイケるんじゃないかと。
ザーサイのこぶの部分はもちろん美味しいんですけど、ザーサイ漬けにするのが割と手間なんです。
やわらかいうちに収穫して、塩漬けにするんですけど、意外と難しいんです。最近はコブを半分に割ってから漬けるようにして、うまくできるようになりました。
ザーサイは好きで食べたくて、でも国産のものってあまりないので、自分で作り始めたんですけどね。

【松野】農家さんは、自分で食べたいものを自分で作れるのがいいですよね。
実は最近、「生産者の顔が見える」っていうのを、レストランさんが求めているのは感じます。
農家さんに店に来てもらって、お客さんに喋ってほしいとか、そういう話が増えて来ているので、農家さんにもキャラ立ちしてほしいと思っています。
石川さんはもちろん、お弟子さんたちに育ってもらうのを期待しています!

有機野菜の流通の形を考える

【松野】普通のスーパーでも「オーガニック」と表示されたジュースが置いてあるのを見かけるようになりました。オーガニック野菜も、一般化してきていると感じています。

【石川】「有機」と書くと売りやすいみたいですね。先日、大手の食品メーカーさんの視察を受けたのですが、てっきり研修や福利厚生で社員に農業体験を、という話だと思っていたら、がっつり新商品企画の、原料調達の視察でした。
ただ、工場のラインを動かすには最低何百キロ必要、っていう量があって、今の有機農家でそこまで作れるところはなかなかないですから、実現はしなかったですけれども。

【松野】超大手スーパーでも有機専門の店舗を開業するなど、取り組みを始めましたよね。

【石川】オーガニック農家の間でも、歓迎する声はあります。あれができたおかげで、流通が増えるし、生産者も増えるし、慣行農業から有機に乗り換える人も出てくるだろうし。
ただこの先、全国チェーンで扱うという規模になってしまうと、膨大な量を供給しないといけなくなります。慣行農業と同じように工場生産的に作る必要がでてきます。

でもオーガニック農業の目的の一つは、環境に寄り添い、環境を守ることだから、そこまではできないですよね。
1軒の農家が有機で始めて、成長して、自分自身でやっていける範囲が見えてきたら、それ以上は広げちゃいけないと思います。
環境と共存しなければいけないし、壊したものがあれば直していかないといけないんですね。

【松野】大手の物流は、効率化の究極の形だと思います。効率化自体は悪いものじゃないですが、結果がコスト競争になっていて、行き着く先に「価格の叩き合い」が起きてしまうんですよね。
物流の本来の目的は、食材をお客様に届けることなんですが、どこかでお金を稼ぐことが目的に変わってしまって、それを突き詰めるとああいう形になるのかなと。

【石川】一番良いのは、作った農家がお客様に直接売ることなんですよ。
でもお客様は農園の近くにいないから、いるところまで出かけるには相当の労力が必要になってくるわけで、そこを代行するのが物流の役割でいいと思うんです。
理想を言えば、都会に常設のマルシェ(市場)があって、農家さんのことがわかっている人がいて、農家はそこに作物を送ればいい、欲しい人はそこに買いに行けばいい、という形だと思っています。
外にオープンな、卸売じゃなくて誰でも買いに行けるところ。
レストランなんか業務用に欲しいところも、そのマルシェから供給すればいい。
誰かそういうの作ってくれないかなーと思っているところです。

【松野】週末のイベント的に開催しているところはありますが、そうじゃなくて日常的にある必要がありますよね。
慣行野菜では、大田市場や築地市場がある程度その役割を果たしていますが、有機野菜にはそれが欠けてますよね。
競りの機能はなくてもいいように思いますが、そこにいけば物がいつもある、適正価格で手に入る、業務で使いたい時にアテにできる、そういう環境を作りたいですね。まだ力が足りませんが、そこを目指しています。

求めるのはフェアな取引関係

【松野】他に流通業者に期待することは?

【石川】先の話でも出ましたが、生産を依頼するなら、ちゃんと約束した量を買い取ってほしいですね。
100欲しいって言われて見込みで作って、実際には10しかいらないって言われること、けっこうあるんですよ。

【松野】うちは自分で責任を持って買い取れるという量しかお願いしません。
A品の他に、B品や規格外サイズのものが出るのも織り込んで、これぐらいまでなら売り切れるなと読める量でしかお願いできないです。

【石川】あとは、フェアにやってほしいということですね。
仕入れたものを幾らで売るのも自由ですが、やはり仕入れの何倍もの価格で売って、あっという間にプール付きの家を建てたような人も、過去にはいましたから(笑)
その人に「もう少し高く買ってよ」といっても、値段を上げてくれなかったんですね。
そういうところとは、何かあった時に「やっぱあそこに売るのはやめようよ」という話になってしまいますよね。

フェアじゃない業者っていうのは、消費者と生産者をつなげないんです。
間に入っている人が、何か後ろめたいことをやっているからなんですよ(笑)
3倍で売るのは売るで構わないんですが、その理由がお互いに理解できるような関係性ができていないとだめです。

ぜひ畑に来てほしい

【松野】あとは、生産の現場に人を連れて来たいですね。

【石川】今度NPOで田舎暮らしコミュニティーセンターを作るんです。
カフェが中心なんですが、そこに色んな情報が集まってて、旅行で来た人が、遊びにいきたいけどどこがいいか?とか、そこで聞けばわかるようにしたい。
電動自転車を貸し出しして、ソーラー充電のスポットを地元商店に置いてもらって、サイクリングだったり、ガイド付きのツアーだったりをしたい。
ダイビングのスポットとか釣り船を紹介したりして、紹介料をちょっとずついただき、NPOの運営費に回すと。
釣り船も、ひまな時間が多いんですよ。釣りじゃなくても遊覧で海岸を一周ぐるっと見せて回るとか、できるんですね。漁船に乗ったことない人って多いですよね。
もちろん、農業体験も入れていきたいです。

【松野】いいですね、そういうのがあると、遠方でも家族連れで来てもらったり、やりやすくなります。
ガイドブック的な観光スポットも良いんですけど、旅行者としては、地元の人は何を食べているの?何で遊んでいるの?が知りたいですよね。

【石川】カフェに行けば「あそこいいよ」「新しい店できたよ」って教えてくれる面白いおじさんに会えるとか、いいですよね。

【松野】娘が通う保育園や他のところでも、農業体験をさせたいけど、誰にどう話をすすめたらいいのかわからない、という声を聞きます。食育のニーズもけっこうありますね。

【石川】先日、エディブル・スクールヤード・ジャパンという活動に参加しました。(http://www.farmcanning.com/calendar/2017/3/19
元はアメリカで始まった取り組みで、学校の中や、近くに畑を作って、生徒に育てさせる。近くに青空教室を作って、その畑から収穫したばかりの野菜を料理して食べるような授業をやるんです。
田舎の子供たちも、意外と農業体験をしていないので、好評でした。
実は、こうして土に触れ、ちゃんとしたものを食べることで、子供が活発になるし、学校の中が荒れなくなるんです。アメリカで実証されたんです。

ただ、田舎ばかりにずっといると、田舎の良いところも見えなくなってくるので、半分くらい田舎で半分くらい都会が理想ですね。

【松野】田舎と都会の両方に家があるといいですね。

【石川】田舎で格安で泊まれるところを整備しても、それに近いことが実現できますよね。
今、そういうところも作ろうとしています。

【松野】今後の展開がますます楽しみですね。お体には気をつけて、頑張ってください。
本日はありがとうございました。


取材日:2017/04/08

今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
前編でも、ディープなお話を伺っています。併せてご覧ください!

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おまけ

この日は前日から降り続く雨のため、ハウスの中でお話をうかがいました。
南国・南伊豆のハウスは、珍しいものでいっぱいです!
その模様はこちらの記事でご覧ください。

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