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代表・松野が聴く!生産者・石川さん 前編 – 有機農家の経営を考える –

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代表・松野が聴く!生産者・石川さん 前編 – 有機農家の経営を考える –

代表・松野が聴く!生産者・石川さん 前編 – 有機農家の経営を考える –

有機農業の生産者の方々からディープなお話を伺う企画がスタートします!
オーガニック野菜との向き合い方、また有機農業の未来など、多方面に語っていただきます。

第一弾は、有限会社マザーアースクラブ代表 石川憲一さんです。
静岡県賀茂郡南伊豆町で、無農薬栽培を30年続けてこられたベテラン農家さんです。
野菜が美味しいのはもちろん、お手頃な価格で安定した出荷を続けてられており、業務用としては大変ありがたい農家さんです。

取材日はあいにくの雨模様で、ハウスの中でお話を伺いました。

聞き手は弊社代表の松野です。

前後編・2回に分けてお伝えします。


最初は自分と家族が食べるものを作った

【松野】有機農業を始められたきっかけを教えてください。

【石川】30年前は東京で店舗を構え、シルバージュエリーの製造と販売をしていました。
バブル時代で経営も順調でしたが、バブルな頃の人付き合いに疲れたこともあって、店は閉めて田舎に移住しました。そこでアトリエを作り、卸売をやっていました。

最初は静岡県天竜市の山中、4軒しかないような集落で築100年の古民家をリフォームして住みました。
南アルプスも望める素敵なところでしたが、寒さが厳しいところでしたので、移住を考えました。
あちこち探すうちに、南伊豆にご縁ができ、杉林を購入しました。
大工の経験もあったので、南伊豆まで通いながら、杉林を切り、整地して、自分で家を建てました。
埼玉県まで行って入手した古い電柱の木材なんかも使いましたね。
30代半ばの頃です。

当初は農業をやるつもりはなかったんです。でもそのうち、自分が食べるもの、家族に食べさせるものを、ちゃんとしたものにしようと思って、家庭菜園を始めました。
自宅の周囲の山林を借りて、整地して田んぼや畑にして3反の面積から始めました。
そのうちに、たくさんできた野菜は知り合いに買ってもらうようになりました。
少しずつ面積が増え、有機農業をやっていた近所の農園の土地を引き継いだりすることもあって、気がつけば本職よりも畑にいる時間の方が長くなっていました。
これは仕事にした方がいいな、と思ったのがきっかけです。

有機農業で食べていくには

【松野】農業で食べていけると思ったのはいつ頃から?

【石川】南伊豆に移住してから10年ほどして、自分の菜園から買ってくれる固定のお客様もついてくれるようになり、個人として農業をしていました。
そこから3~4年して、もう農業を生業にするしかないと腹を決め、それならば経営がやりやすくなるように、と法人化しました。

【松野】お客様になってくれたのは、どんなところですか?

【石川】自然食品店さんや、生協さんですね。
今、お取引しているのは、当時からのお付き合いが多いです。

途中には、多くの企業、生協、団体とお取引した時期もありましたが、相手の組織が大きくなるにつれて注文のロットが大きくなり、自分の畑の生産量を考えると、対応が難しくなりました。
また大手になるほどリスクを外部に持たそうとする、売り上げの増減を丸ごと生産者側に持ってくる傾向がありました。
たとえば 1,000pc 買うという話で進めてきたのに、当日になって 100pc に減らされたこともありました。有機農産物には市場がなく、直接取引なので、急に900pcいらないと言われても、他に買ってもらえるところなんてないんです。結局は捨てざるを得ません。
坊ちゃんかぼちゃを30ケース、泣く泣く捨てたこともありました。

今は大手のお客様との取引はやめ、自分のところに見合った規模のところとだけ、お取引をしています。

【松野】規模のお話が出ましたが、どのくらいが理想でしょうか?

【石川】有機農業を経営するには、あまり大きな規模にする必要はないと考えています。
売り上げが年間700~800万円程度でいいので、それぐらいの農家が集まって、出荷組合、生産者連合をつくって、大口にも対応してく形が理想と考えています。

うちは主に菜花、クレソン、甘夏、フキ、かぼちゃ、たけのこ、お米をやっています。
菜花は1年に50,000パック出しますね。日量で500~1,000パックですね。

農業は地域の伝統に支えられている

【松野】それを全部手で詰めるんですよね?

【石川】そうです。今年は少し離れた地域に、作業所の「支店」を作りました。そこで地元のおばあさん達が、ものすごいスピードで詰めてくれます。すごい助かっています。
前まで、うちまで来て詰めてもらってたのですが、みなさん80歳を超えて移動が大変だということで、じゃあ持っていくからやってよと。
あの方達の働きは素晴らしいですよ。午前中しか作業してもらっていませんが、他のパートさんの倍は詰めてくれます。若いパートさんに頼むより、こっちから持って行っても、お年寄りにやってもらった方がいい。それでお金になるから、彼女達も喜んでやってくれています。

【松野】なんでそんなに早いんでしょう?

【石川】あれくらいの年齢の方は、農家で育っていて、その親の世代はすごい厳しかったんですよ。何かやるにしても、もたもたやれない。早くやることが身についているんですね。
それがあの年になっても変わらない。80歳を過ぎて歩けないくらいなのに、手は動く。
本人も仕事するのが楽しくてしょうがないようです。電話かけてきて「明日は仕事ないのか?」って言うんです。「明日、持っていくよー」と答えて。その翌日昼頃には作業終わってすぐ電話かかってきて「もう終わったよー、あたしゃ帰って寝るからねー」と。で、引き取りに行くんですね。
4人くらいで競うようにやってくれるので、めちゃくちゃ早い。1日1,000パックも楽勝でしたね。

【松野】雇用ややりがいという面でも、農業って可能性があると思うんですよね。
お年寄りや、障害を持つ方が活躍している農園の話も伺っています。

【石川】農業って「業」なんですよ。この村はこの村で、昔から伝わってきている農業と、その技があるんです。
僕らは外から来て違う形でやっているけど、うまくコラボができると、村の農「業」が残っていくんです。
今僕らがやっていることは、新しいことをやっているんじゃなくて、昔からこの村で続く農業に割り込んで、たまたま僕がやっているこの時間だけ、あと10年か20年かわからないですけど、その間だけこれを維持している。

そして、終わりそうになったら次の人に渡していく必要があって、そういう形でやらせてもらっていると考えています。
僕らは間をつなぐだけ、接続子だと思っています。

そういう面と、野菜を作ってお客様に食べてもらうという面と、2つあって両方あって成り立つのがこの仕事だと思います。

新規就農者がつまづく理由

【松野】若い方はどうでしょう?育っていますか?

【石川】私の農園を卒業した研修生が近くで就農していたりしますが、なかなか700~800万円の規模にも達していないですね。

農家を志す人や新規就農者に「どうやったら農業でうまくいきますか?」と相談されることがありますが、「じゃあ5年後にどういう姿でありたい?家族構成は?家は買う?年収は?畑の広さは?」と尋ねても、答えがない人が多いんです。
最初からそこを考えて動かないと、時間をどんどん無駄にしてしまいます。
35歳過ぎて就農しようという人が、3年を無駄にしたら、もう40代目前、体力も下り坂ですよね。
どんな農家になりたいかの理想像をつくる、そこに向けて頑張ることが必要です。

【松野】私たちも新規就農者と話をすることがあるが、経営視点の見通しが甘いと感じることがあります。
「就農」と言いますが、実質は起業することと同じはずなんです。
一般の起業なら事業計画を作るし、お金を借りたり出資してもらうのにも、事業計画がないと話は聞いてもらえません。でも、農業ではそれをやっていない人が多いです。なぜなんでしょう?

【石川】家庭菜園の延長で、美味しいものが穫れた、たくさん穫れたのでお裾分けしよう、喜んでもらおうというだけなら、それで十分なんです。
ただ、それを袋詰めして販売しようとするところから、話は変わります。
直売所で売るにも、地元の農家との厳しい競争があるのが現実なんです。
ネットで販売します、というのもよく聞きますが、ネットで販売するということは日本中から買ってもらえる反面、日本中にライバルがいることになります。その中で自分の商品を売るということは、自分がどれくらいのクオリティのものを作っていて、それをどのくらいの値段で、どのくらいの量を売るのか、考えていないといけません。

素晴らしいリンゴができた、100円で売りたいと思っていても、他の人が10円で売っていたら、絶対に売れないですよね。
商売の基本である「そこ」を考えてから作物を作らないといけないのに、順序が逆になっている。
さらに、自分はどれくらいのお金があると暮らしていけるのか、もし夫婦で子供がいれば、何年後に子供にいくらかかりそうなのか、そこを考えないと(どういう仕事をするか)設計できない。

「経営」が「しつこさ」と「ねばり」を生む

【石川】ちゃんと設計してやる人が集まらないと、グループで野菜を出荷していくのは無理なんです。
私のところの研修を卒業して近所で就農したメンバーに、野菜を買い取るよ、一緒に出荷してあげるよといっても、野菜を持ってこないんです。
理由を聞くと、予定した量の野菜が作れていないんです。
どこに問題があるの?と聞くと「気候のせいですかね…」というんですが、近所にある私の畑が作れているんですから、気候のせいだけじゃないはずなんです。
気候が思わしくないとしても、その中で如何にしつこくやるか、なんです。

例えば去年のように、秋野菜の種を播いたのに、9月の長雨で芽が出ませんという時には、出るまで播き直さないといけないんです。それも10月半ばになったら遅いので、9月中に。わかってるはずなのに、やらないんですよね。うちなんかは、しつこく播き直したんです。それでも足らない分はハウスの中で種播きして苗を育てて間に合わせました。そうしないと、収入がなくなってしまうんです。
目標を設定していないと、その「しつこさ」が出てきません。

播き直しも失敗したら、すぐ別の品目に切り替えるとか、常に何かしらの手を打っていかないといけないんです。
そういう意味で1品目しか作らないというのは、すごいリスクが大きいんです。
田んぼぐらいかな、比較的リスクが少ないのは。
できるだけ品目をふやして、1つ2つコケても大丈夫なようにしておかないといけません。

自分の得意な作物を柱にする

【石川】ただ漫然と増やしても意味がありません。一人の農家ができることには限界があるので、品目を増やすと一つ一つ生産量が減って、全体の売り上げが下がることがあります。
まずは、得意な品目、これだけはどこに出してもOKってのを一つ、作れるかどうかですね。自分が好きな品目でもいいんです。
それがないと、適当に作って適当に売ってる感じになって、いずれ行き詰まります。

1万パックは売れなくてもいいから、確実に1,000パックが出るものを何種類か持つ。
逆に100パックぐらいしか売れないものは、主力から外して、趣味の世界で作る。どうしても欲しいって人にだけ売るようにしていかないと厳しいですね。

【松野】石川さんが今作っている品目を選んだ基準はなんですか?

【石川】例えば菜花なら、私が農業を始めた頃は、まだ今ほど温暖化が進んでいなかったので、冬には、四国・九州、東京近郊では千葉県と、ここ南伊豆でしか作れませんでした。そこに後発でもつけいる隙がありました。非常に売りやすかったです。
それに一回評判が良くなると、お客様はまた買ってくださるので、あとはそれを維持することですね。
いかに美味しいものをちゃんと出すか。

【松野】結局は経営なので、ポートフォリオじゃないですけど、なにをどのくらい作るっていうのを考えて組み合わせていかないと、いけないですよね。

【石川】うちも法人化する時に、全部の品目で原価計算をやったんですよ。
利益が出ないのが、お米。やんないほうがいい(笑)
でも、やらないと田んぼが荒れるし、お米がないのも寂しいので続けていますが、トントンぐらいです。
単品でダントツに利益率が良いのが、ふきですね。種撒かなくて良いし、一回繁れば草取りもしなくていいし、肥料もいらないし。
意外に良くないのが、筍です。自然任せなので、コントロールできないし、全く取れない年もあります。竹林の地面をビニールシートで覆って促成栽培するというのを聞いて、試したこともありますが、結果は普通の竹林と全く同じでした(笑)
全体の売り上げにかかる経費の比率でみると、菜花が良いです。他の作物よりも長く、3ヶ月間ぐらいコンスタントに出るので、経費の割合が下がります。

【松野】12月から1~2月ですよね。他の地域からは出てこない時期なので、私たちもありがたいです。

【石川】11月よりも前に作ろうと思えば作れるんですよ。ただ、その時期は秋野菜がいくらでも出回っているので、
売れないんですよ。

【松野】そういう所も、経営視点で考えていらっしゃるんですね。

オーガニック野菜の適正価格とは

【松野】価格については、どう考えていらっしゃいますか?

【石川】「最高級の品質」と言われる菜花を300円で売るのと、うちはうちで自身のある品質のものを150円で売りますというのと、どちらがたくさん売れるか、お客様が買いやすいかというと、最高級の品質のものって、そんなに沢山はいらないですよね。
特に野菜は、確実にいいものだから高く売りますという必要はなくて、それなりの値段でバンバン食べられるように、日々の食事で使ってもらう方がいいですよね。
だからうちは「最高級」のものは作りません。常に買いやすい値段設定をして、それにあわせて作るようにしています。

【松野】私も野菜を売る仕事を始めた時に、希少な最高級のもの、特別に美味しいと思うもの、それを高く売りたいと思っていた時期があるのですが、やはり野菜って考えた時に、広く何時でも食べられるものじゃないと意味がないと考えるようになってきています。
それは、石川さんと、もう一人、千葉のベテラン農家さんから野菜を仕入れていて、感じるようになったことなんです。
お二方とも、決して高くないのに、味はその辺のものより一段上なんです。
それだからこそ、また次の年も買いたいと思ってしまうんです。

【石川】おもしろいことに、今、小売店でクレソンが倍々の勢いで売れています。
一度気に入ってくれたお客様が、必ず買ってくれるみたいで、毎日のように買ってくれるお客様もいらっしゃって、昨年の倍の量を注文してくれています。

【松野】新規就農の方に多いのですが、かなり高い値付けをする方がいらっしゃいます。
確かに、詳しいお話を伺って、その人の畑の面積、生産量を考えて、その人が必要な生活費を割ると、その値段になるのですが、高いんです。

【石川】でも、高いと売れないから、どっちみち苦労しますよね?

【松野】うちが他の方から買っている値段と差が大きいので、それじゃ買えないよと、決して買い叩くつもりではなく、他の人はこれぐらいの値段でやってるよ、その値段で出せるように頑張ってみない?という話はするんですが…

【石川】それが適正価格ですよね。

もちろん量を少なく、値段を高くして売る、という考え方もありますが、発送量が少なくても一定の送料がかかりますので、どこかで価格に反映されます。お客様には送料の分だけ割高で買ってもらううことになるので、難しいところですね。

100円かそこらの商品だと、買取価格を5円でも上げてもらうと、利益率で言えば5%改善ですから、それはそれは助かるのですが、5円上げて売れなくなるより、同じ値段で倍の量を売ってもらう方がいい、流通の方にはそっちの方向で努力してほしいので、そういう意味でもちゃんと量を作ることは大事だと思います。


取材日:2017/04/08

後編「有機野菜の流通を考える」に続きます。

代表・松野が聴く!生産者・石川さん 後編 - 有機野菜の流通を考える -
代表・松野が聴く!生産者・石川さん 後編 - 有機野菜の流通を考える -
この道30年のベテラン有機農家・石川さんとの対談企画、後編です。 オーガニック野菜の流通、理想の市場から、都市と地方の交流まで、話は広がります。 今回もディープですよ!

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