分類:アブラナ科ダイコン属
名称:Radish(英語)、Radis(仏)、大根(日本)
大根はアブラナ科ダイコン属の一年草で、春の七草の一つである「すずしろ」として親しまれています。日本でも古くから各地で様々な品種を栽培してきましたが、現在は「青首大根」と「白首大根」の2品種が中心となっています。
歴史
原産地については諸説ありますが、地中海沿岸から中央アジアと言われ、紀元前3000~2000年頃にはエジプトで食され、紀元前500年頃には中国で栽培されていたようです。
ヨーロッパ諸国では15~16世紀頃に栽培が始まり、日本へは中国・朝鮮半島を経由して縄文・弥生時代頃に伝わって来たといわれています。
古事記に「於朋泥(おほね)」として記されており、仁徳天皇陵から大根の種子が発見されているそうです。おほねとは根が大きいという意味で、のちに「大根」という漢字があてられて室町時代以降に現在の「ダイコン」と呼ばれるようになりました。
本格的に栽培されるようになったのは江戸時代以降で日本各地で様々な品種も誕生しました。
主要品種が絞り込まれたのは戦後からで、白首大根の”練馬”、”早生”、青首大根の”宮重”の三種に集約し、その後1970年後半以降流通している大根は白首大根から青首大根が主流となりました。
品種
現在日本で栽培されている大根は100品種以上あります。
青首大根
現在市場に一番多く出回っている大根で、生産量は大根全体の約90%以上を占めています。「宮重大根」を品種改良した「対病総太り(たいびょうそうぶどり)」という種類で、1970年代から流通の中心となりました。太さが均一で細長いのが特徴で、地上に出ている首の部分が緑色になることから「青首」といわれます。
名前に由来するとおり耐病性があるうえ、みずみずしく甘みが強いので多くの人に好まれ、また収穫時に抜きやすいこともあって全国各地で栽培されています。
加熱しても煮崩れしにくく、大根おろしにしても辛味が少ないため、 煮物や漬物、サラダや大根おろしなど、さまざまな料理に向いています。
白首大根
古くから栽培されてきた大根で、根がすべて白色なのが特徴です。
三浦大根や練馬大根、みの早生大根などで知られ、漬物用などで多く使用されています。
三浦大根
神奈川県三浦で生まれた品種で、真ん中が太く首の部分まで白い大根。
長年に渡って「大根といえば三浦大根」と言われるほどの主力な存在でしたが、昭和54年の台風で大被害を受けたのを機に、病気に強くて栽培しやすい青首大根に首位の座を奪われました。
しかし今でも三浦大根の人気は根強く、冬には直売所などに買い求めに集まる方がとても多いため、一時期激減した栽培も近年徐々に増えてきています。
青首大根より肉質は緻密で水分が非常に多くジューシー。
辛味も甘味も苦味も強く、煮崩れしにくく、加熱すると苦味が旨味に変わり甘みが出るため風呂吹きやおでんなどによく使われます。
その他、なますやツマにも向いています。
練馬大根
練馬地方を中心に栽培されてきた白首大根。
大きく2品種に分かれ「練馬尻細大根」と「練馬秋づまり大根」があります。
練馬尻細大根は水分が少なくて皮が薄く乾きやすいことから干して沢庵漬けに、練馬秋づまり大根は水分が豊富で甘味が強く肉質が柔らいので煮物やべったら漬けなどに使われます。
長さが70~100cmにもなり、真ん中が太めで上部と下部は細く、葉が大きく広がっているのが特徴です。
みの早生大根
夏の暑さに強い大根で、生産時期も長く3~10月まで「春まき美濃」「黒葉美濃」「美濃つまり」など、数10種に及ぶ品種が出回っています。
中でも「志村みの早生大根」は江戸東京野菜として多く栽培されていた大根で、江戸時代に板橋区志村町のみのきちという人が栽培を始め、早生大根だったことから「みの早生大根」と呼ばれるようになりました。
練馬大根から選別されたとされています。
かつては多く栽培されていましたが、病気に弱いことから生産量が激減し、昭和40~50年頃には消滅してしまったそうです。
現在は地元の農家の方々が本格的に復活を目指して取り組んでいます。
形状は、根が45~60cm、直径が6~8cmで、青首大根より少し細く、辛味があり甘味が少ないのが特徴です。大根おろしにして蕎麦の薬味にしたり、漬物などに向いています。
亀戸大根
東京の江東区亀戸が原産の大根で1861~1864年頃栽培が始められた江戸東京野菜の一つ。
明治の頃は「おかめ大根」や「お多福大根」と呼ばれていましたが、その後生産地の名前「亀戸」大根と呼ばれるようになりました。
昭和初期まで盛んに栽培されていましたが、住宅化が進んだことにより現在では江戸川区や葛飾区などで少量が栽培される程度となり、ほとんど市場に出回らなくなっています。
根はきめ細かく美しいほど真っ白、茎までも白く、葉は大きく柔らかいのが特徴です。
見た目は細長いカブのようで、長さ約30㎝程度の春大根です。
通常の大根によりビタミンCの含有量が2倍以上もあります。
ほどよい辛味があるため漬物に向いています。
源助大根
加賀野菜の一つ。愛知県の篤農家井上源助氏が育成した「源助総太」という大根を、金沢市の篤農家松本佐一郎氏が打木大根の自然交雑したものを繰り返し選抜育成してできた品種。
生育が旺盛で病気にかかりにくいのが特徴ですが、スが入りやすく空洞症が発生しやすいことから、青首大根に取って代わられ、絶滅しかけた時期もありました。
現在は伝統野菜ブームに乗って生産者が徐々に増えてきています。
形状は太く短くやや小ぶり。スベスベした白い肌が特徴です。
緻密な肉質で柔らかい上に甘味が強く煮崩れしにくいため、煮物によく利用されています。
また金沢の伝統料理である大根寿司にも使われます。
聖護院大根
京都の伝統野菜の一つ。京都市左京区聖護院で古くから京都で栽培されていた丸形の大根と、尾張の国の宮重大根とを交雑してできました。
もとは長い大根だったのが京都の地で栽培されているうちに丸くなったといわれています。
形状は約1~2㎏の丸型で、甘味が強く、肉質が非常に柔らかいのに煮崩れしにくく味も染みやすいので煮物や漬物に向いています。
京都銘産の一つにこの聖護院大根で作った千枚漬けがあります。
甘味が強いのでスライスやスティックサラダもおすすめ。
ただし水分が多いため大根おろしには向いていません。
桜島大根
鹿児島県の特産物で、水はけの良い桜島の火山灰で栽培されていることから「桜島大根」と呼ばれます。
世界最大の大根で、ギネスブックにも認定されています。重さ通常は6kg程度ですが大きなものになると20kg以上にもなります。
一般的な大根よりきめが細かく繊維が少なく甘みがあり煮崩れもしにくいことから、大根おろしなどの生食の以外にも、ふろふき大根やぶり大根などの煮物や鍋料理などに向いています。
通常の青首大根などと比べて滑らかな舌触りが特長です。現在は栽培された桜島大根の 8 割が、切干大根や漬物などの加工品として使われることが多くなっています。
守口大根
もともと大阪の守口で栽培されていた大根で、現在は愛知県や岐阜県の木曽川沿いで栽培されています。
守口大根の由来は幾つかあり、1つは大阪の天満宮付近で栽培されていた細長い大根(宮前大根)が漬物に使用されており、豊臣秀吉がこれに「守口漬」と名付けたことから守口大根と呼ばれるようになったものです。
この守口大根は住宅化が進んだ影響で栽培が途絶えてしまいましたが、近年試験的に栽培が開始され、平成19年になにわの伝統野菜になり、現在守口市で特産品にすべく取り組みが勧められています。
もう1つは、美農の国の長良川沿いで栽培されてい美濃干大根などの細長い大根が明治時代になってから大阪の守口大根に変わって守口漬に利用されたことからこちらも守口大根と呼ばれるようになりました。
大根の品種の中でもっとも長く、根の長さは1m以上、太さは2~3cmとごぼうのように非常に細長いのが特徴です。世界一長い大根としてギネスブックにも認定されています。
繊維質が多く辛味が強いため生食用としては適さず、主に守口漬けという漬物用として栽培されています。
祝大根(いわいだいこん)
古くから奈良で栽培されている大和の伝統野菜です。雑煮大根ともいわれます。
奈良を中心とした関西のお雑煮に使用される細くて小さい大根です。
奈良県奈良市奈良坂町で大正時代の終わりごろから栽培され始めたといわれています。
現在の主な産地は、滋賀県や岐阜県、京都府等の関西地域です。
太さ3cmほど、長さ20~30cmの細くて小さい大根です。
透き通るような白い肌と緻密な肉質で煮崩れしにくいことから、雑煮の他に煮しめにも使用されます。
奈良県や京都での雑煮は白味噌仕立てで、丸餅、金時人参、里芋、角を落とした豆腐、祝大根などがすべて角がないように丸のまま、または輪切りにします。
これには「角が立たず家族円満に過ごせますように」との願いが込められていることから、輪切りにしたときに適切な大きさになるようこの大根が育てられているのだそうです。
辛味大根
辛味大根とは辛味が強い大根の総称です。
通常の大根より小ぶりで水分が少ないのが特徴です。
いくつか種類がありますが、それぞれ大根おろしにして蕎麦やうどんの薬味として食すのが一般的で、煮物には不向きです。
辛味成分はアリルイソチオシアネートといわれるものです。アリル芥子油とも呼ばれています。
すりおろすことで生成され、空気に触れることで辛味が増します。強い抗菌作用や殺菌作用、食欲増進と消化促進作用などがあります。
からいね大根
その名のとおり極めて辛い大根。肉質はとても硬く水分が少ないため薬味に最適です。
また貯蔵性が高く、長期保存できます。
赤と白の二種類があり、太さ約6~10cm、長さ約10~15cmです。赤い方は鮮やかな鮮紅色で皮ごとおろすと色が際立ちます。
カザフ辛味大根
カザフスタン共和国から導入された種子を育成した品種なのでカザフ辛味大根といいます。
直径約10cm程度の丸型、上部は鮮やかなグリーン、下部は純白で辛味が強いのが特徴です。
中身も外側の色と同じように上部の緑の部分は中も薄い緑色です。
微かにわさびのような香りがあります。
皮に近い部分の方が辛味が強く水分も少ないので、皮ごとおろして薬味や大根おろしに最適です。
辛味大根の中では辛味が穏やかなので、生のままサラダに使うことも出来ます。
京都の辛味大根
京都の伝統野菜の一つ。京都市北区大北山(原谷)が原産で、元禄・宝永時代頃から現在の北区鷹峯で栽培されてきたといわれています。
形状は根、茎、葉とも小カブによく似ていてサイズも小さく、直径は3~5cm程しかありません。
水分が非常に少なく、おろしても汁が出ないことから、出汁の味が薄まらないのでそばつゆの薬味として使用される他、脂身の多い魚との相性もよいのでトロなどと一緒に食されることもあります。
主に12~1月頃に出荷されるので年越しそばへの需要が多かったのですが、生産者が激減していることから、今では希少価値の高い大根となっています。
伊吹大根
滋賀県坂田郡伊吹町の野菜で、近江の伝統野菜の一つ。生産者が徐々に減り一時は絶滅寸前までになりましたが、道の駅のオープンをきっかけに伊吹の名の付く特産として復活しました。
葉は赤紫色で、根の部分は太く短く丸みがあり、先端はネズミの尻尾のように細長いことから、地元では「ねずみ大根」とも呼ばれていました。(信州長野のねずみ大根とは別の品種。)
青首大根より水分が少なくて実が固く煮崩れしにくいため煮物にもよく使われます。
ねずみ大根
こちらも伊吹大根と同様に近江の伝統野菜の一つで、滋賀県草津市北山田地区に古くから作られてきた野菜です。
お尻の部分が少し膨らんでいて根の先が細長く伸び、まるでネズミの尻尾のようだということから「山田ねずみ大根」という名になったそうです。残念なことに、近年は漬物の需要が減少していることや、生産者の高齢化、量産に向かない品種などといったことから生産量が激減している状況となっています。
大根の形状は、首の部分まで色白で極めが細かいのが特徴です。また、よく締まった柔らな肉質でパリッとした上品な歯ざわりです。
山田ねずみ大根は漬物とされることが多いのですが、辛味が比較的穏やかなので、漬物以外にも薬味や大根おろし、サラダや煮物など、幅広く利用できます。
親田辛味大根
産地は長野県下條村ですが、下條村内の親田地区でしか栽培できないといわれている幻の大根です。江戸時代に尾張徳川家に献上された記録が残されており、約300年ほどの歴史があります。
カブのような丸型の大根で、太さ6~9cm、重さ200~250g程度。緻密な肉質で水分が少ないため貯蔵性に富み、また青首大根より辛味成分のイソチオシアネートが約4倍、ビタミンCも2~3倍と栄養面でも優れています。
白い物と紫色の物があり、白い物は「ごくらくがらみ」紫の物は「とやねがらみ」と呼ばれています。
辛味だけでなく大根特有の甘みもあるため、主におろしとして使われ、薬味として蕎麦や焼き魚、餅、焼肉、天ぷら等に添えられます。中でも蕎麦との相性は抜群です。
カラフル大根
紅/紫
大根の中でも赤や紫色をしたタイプ。この色は赤ワインなどにも含まれているポリフェノールの一種アントシアニンによるもので、強い抗酸化作用があることから活性酸素を除去する働きがあります。加熱すると色が抜け落ちてしまいます。酢の力を利用することでより鮮明な赤(紫)色に変化するため酢漬けなどがおすすめです。
外皮が赤く、中も外皮と同じ色が混じったタイプ | くれない総太り大根、紅しぐれ大根など |
外皮も中も赤いタイプ | 紅くるり大根など |
外皮は赤いが、中が白いタイプ | レディサラダ大根、紅化粧大根、ミラノ大根など |
外皮は白いが、中が赤いタイプ | 青皮紅芯大根、紫大根など |
くれない総太り大根(紅大根)
外皮が赤く、中の部分も白の中に外皮と同じ紅色が混じっているタイプ。
肉質は緻密で甘味があります。
紅くるり大根
外皮だけでなく、中も鮮やかな紅色をしているのが特徴です。
青首大根よりアントシアニンの含有量が約3倍も多いため、強い抗酸化作用があります。
また通常の大根のようなシャキシャキした食感とみずみずしさがあります。
色落ちしにくいのでグリルなどもおすすめです。
紅しぐれ大根
名前は「紅」しぐれですが紫色をした大根です。
くれない総太り大根のように外皮が紫色で、中も白の中に紫が入っています。
辛味はあまりなく甘味があります。
大根おろしにするとほんのり紫色をしていてとても綺麗です。
青皮紅芯大根(紅芯大根)
中国原産の大根。大きめのカブのような丸型で、外皮は白緑色ですが、中は鮮やかな赤い色をしています。
中国では「心里美(シンリメイ)」とも呼ばれ、フルーツ代わりに食されていたそうです。
肉質は緻密でシャキシャキとした食感、辛味が少なく甘みが強いのが特徴です。
レディーサラダ
神奈川県三浦市で栽培されている大根で三浦市の特産の一つ。生食用に開発されたサラダ用大根。
外皮は赤色ですが、中は通常の大根と同様に白色です。
形状は通常の大根を小さくした感じで、大きさ的には300~500g程度の小ぶりです。
紅化粧大根
サラダ用に開発された大根のため「サラダ赤大根」とも呼ばれています。
外皮は赤いのですが、中身は通常の大根と同じような純白色です。
形状は通常の大根を小さくしたような感じで、大きさ的には約20~25cm程度と小ぶりです。
辛味はほとんど無く、ほんのりと甘みのある大根です。
ミラノ大根
イタリアで栽培されている品種を国内の種屋さんが販売している品種。
形状はにんじんに類似していて、大きさはニンジンより少々大きめの20cm前後。
外皮は薄い紫色のものから黒に近い青紫色のものまであり、中は通常の大根や紅化粧大根、レディーサラダと同様に白色です。
水分が少なく青首大根より緻密な肉質で辛味が少々強めです。
皮が紫色なので大根おろしにすると薄紫のおろしになりとても綺麗です。
黒
黒大根(黒長大根)、黒丸大根
日本ではまだ珍しく、主にヨーロッパで一般的に使用されています。
代表的なものとして、黒大根(黒長大根)と黒丸大根があります。
黒大根は通常の大根を小さくした形で長さは20cm程度、黒丸大根はカブのように丸型で大きさは直径8~10cm程度です。
いずれも外皮は黒色でガサつきのある感じですが、中は純白色で水分が少なく緻密な肉質です。
辛味は青首大根より強く辛味大根より控えめです。
またこの辛味は加熱することで甘味に変わるため、焼いたり揚げたりする料理にも向いています。
緑
ビタミン大根(青長大根)
中国原産の大根で、根は地中にあまり深く伸びずに地上に出ている部分が多いため、先端部分以外は緑色をしています。
中の部分も薄い緑色で、通常の大根よりビタミンが豊富なことからビタミン大根と呼ばれています。
大きさは20~30cm程と太めなのが特徴です。
全体的に辛味が少なく、緑色の部分は甘味が強いため、サラダや漬物など生食に向いています。
ラディッシュ(二十日大根、ラレシ)
カブのように見えますが、ヨーロッパが原産地の西洋大根の一種。英語名はRadish。
青首大根の英語名と同じで紛らわしいことから青首大根を Japanese Radish と呼ぶこともあります。
和名は約二十日ほどで収穫できることから二十日大根といいます。
世界で一番小さい大根で、大根の祖先ともいわれ、現在の大根は長年かけてラディッシュを品種改良したものだそうです。
ラディッシュの歴史はかなり古く、ローマ帝国時代や古代エジプト時代から食されていたと記録されています。
日本に伝わってきたのは明治時代といわれています。
形状は直径約2~3cm程度の丸型で市場によく出回っているのは皮の色が赤で中身が白いタイプですが、その他白玉、紫玉、赤長、白長などがあります。
彩りが綺麗でカリッとした食感が爽やかなことからサラダなど生食で利用されることが多いです。