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実践的!野菜の保存法

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実践的!野菜の保存法

実践的!野菜の保存法

仕入れた野菜は、大事に保存し、できるだけ長く使いたいもの。
でも個々のお店では、あまりに手の込んだ管理はできません。

今回は、八百屋である私たちが、現実的な範囲の手間で、できるだけ長く保存できるように、実際の業務でやっている保存方法をご紹介します。
ご参考になりましたら幸いです。

保存方法は数多あれど

新鮮な野菜が、毎日使う分だけちょっとずつ畑から届く、なんていうのは理想ですが、送料を毎回毎回払っていると大変なことになります。
また、天候の問題、配送のトラブルで野菜が届かない、なんて事故もゼロではありません。
やはり業務で使うなら、ある程度まとめて注文し、多少の在庫は持ちたいものです。
とは言え、保存に失敗して傷んでしまっては元も子もありません。

そこで、どうしたら長持ちするかな?と「野菜の保存」で検索してみると、かなりの情報がヒットします。

品目別に「アスパラガスの保存方法」「インゲンの保存方法」「えのきの保存方法」etc…
それはもう、たくさん、たくさん。そして、それぞれ中身は

○○は、新聞紙にくるんで、冷蔵庫の野菜室(10℃)に、立てて入れましょう

××は、ビニール袋で、冷蔵庫(5℃)に入れましょう

▲▲は、湿らせたキッチンペーパーで包んで、冷蔵庫に入れましょう

□□は、水気を取って…(以下略)

……………ごめんなさい、そんなに覚えきれません。
確かに、アスパラとインゲンで「最適」な保存方法は違います。
それらはもちろん、先人が積み上げてこられた貴重な知見ですが、皆が皆、実際にやれるかどうかは別の話です。

多種多様な食材を一度に扱う店では、個々の保管にまで細かい配慮を行き届かせるのは難しいものです。
部分最適を気にしすぎて煩雑な業務フローを作ってしまい、ミスが増えてしまうというのは、陥りがちな罠です。
そもそも「アスパラ専用」「えのき専用」etc…と温度設定の異なる冷蔵庫を何個も用意できません。

じゃあ野菜の専門家・八百屋はどうしてるのでしょうか?
ここでは「できる範囲の手間で、できるだけ長く美味しく野菜を保存する方法」八百屋が身銭を切って試行錯誤したノウハウをご紹介します。


実践的な野菜の保存方法

温度について

基本は冷蔵、一部だけ常温

身も蓋もないようですが、ほとんどの野菜は冷蔵庫に入れておけば、まず間違いありません。
できるだけ低い温度に置くことで、野菜自身の活動と、カビや雑菌の繁殖を抑え、収穫直後の新鮮な状態をキープします。
またジャガイモや玉ねぎ、ニンニクでは、芽が出るのを防ぐことができます。

ただ一部の野菜だけ、低温に弱くて、冷蔵庫に入れると極端に寿命が縮まるものがあります。

さつまいも、かぼちゃ、冬瓜

これらだけは「冷蔵庫には絶対に入れてはいけないもの」として覚えておくといいです。
常温の暗所、できれば風通しの良いところ、空気が澱まないところに置きます。

それ以外は全部、冷蔵庫。
どうでしょう?シンプルですね!

あとは「どっちでもいいもの」があります。
よくネットや本では「常温保存」とは書かれているものの、経験上、冷蔵庫に入れてしまっても特に支障がなかったものです。

玉ねぎ、里芋、柑橘類、りんご等の硬い果物

1ヶ月以上とか長期保存を考えるなら教科書通り常温で保管するのがいいですが、そうでなければ、常温でも冷蔵でもどちらでもいいです。冷蔵庫や保管場所の空き状況にあわせて置きます。

ただ一つ「頻繁に冷蔵庫に入れたり出したり」は、NGです。
冷蔵庫から出した野菜には、表面や袋に露がつきます。この水気を放っておくと、カビ等が繁殖しやすくなります。
また、野菜は生きていますので、激しい温度変化が繰り返されると、環境の変化に対応しようと消耗してしまいます。
一度保管場所を決めたら、使う時まではなるべく動かさないようにします。

基本はこれだけです!

切った野菜は必ず冷蔵庫に

そうそう、大事なことを一つ!
カットした野菜を保存するときは、野菜の品目に関わらず、さつまいもでも、かぼちゃでも、必ず冷蔵庫に入れてください!

包丁などで切った野菜の断面は、非常に無防備で、カビや雑菌がすぐに繁殖します。
切断面をラップで保護し、冷蔵庫の低温環境で保存しましょう。

さつまいも、かぼちゃは、冷蔵庫に入れると長持ちしませんが、切ったものはしょうがない、と諦めてください。それよりも、切断面の保護と冷蔵を優先させましょう。


冷蔵庫の温度設定は4℃を基準に

食材の保管に欠かせない冷蔵庫、お店の規模にもよりますが、大きなお店でも何個も置いたり、それぞれ別の温度設定にしたりできるわけではありません。
私たちは、ただ一つ、ズバリ 4℃の設定にしています。

低温で野菜を眠らせ、カビ等の繁殖を抑えるために、できるだけ低い温度を狙います。
でも野菜が凍ってしまうと、膨張した水分が細胞壁を壊し、一気に傷んでしまいます。
ということで、凍らないギリギリの温度、1〜2℃を目指すのですが、ここで一つ問題が。
冷蔵庫の中は意外と冷え方にムラがあります。
1℃、2℃に設定してしまうと「冷えすぎエリア」が 0℃以下になり、野菜が凍ってしまうんです。

そこで「まぁムラがあっても氷点下までいかないよね」という温度を狙い、4℃設定となるわけです。

もちろん、冷蔵庫のメーカー、機種、大きさによって違う部分もあるので、一概には言えません。(ちなみに弊社では 福島工業株式会社さん の冷蔵庫を使用)
また、設置場所や開け閉めの頻度によっても、冷え方に影響が出ます。
もしお肉やお魚など、他に一緒に入れるものがあれば、その温度設定に寄せることも考えなければいけないでしょう。

まずは、4℃設定で試してみて、あとは様子をみながら上下数℃と調整するのがよろしいかと思います。

小売、陳列販売の小技

野菜を小売する場合は、お客様に見てもらうために、暗い冷蔵庫に入れっ放しにはできません。
大きな冷蔵ショーケースを買って、たくさんの在庫といっしょにバーン!とディスプレーできたら理想ですが、お金がかかりますし、広い場所も必要です。

お店が小規模なうちは、1パックだけ棚に陳列して、あとは随時、冷蔵庫から補充するような方法になると思います。
その棚の品物もできるだけ新鮮に保ちたいものです。

そこで使えるのが「保冷剤」特にプラスチックの外装で、薄く、ある程度のサイズがあるものが便利です。
これをタオルで巻き、野菜の下に敷くことで、冷蔵ショーケースと同じような効果が得られます。
毎日保冷剤を冷凍し、交換する手間はかかりますが、保冷剤は1個数百円ですから、コストパフォーマンスは良好です。

保冷剤の上に野菜を直置きすると、野菜が凍って傷みますので、必ずタオル等を巻いてください。タオルの上に野菜、というのは見た目がイマイチですので、さらに1枚、生成りの布で覆ってみるとか、工夫されると良いと思います。


湿度について

温度の次は湿度です。
野菜の保存に適しているのは「乾きすぎず、湿りすぎず」です。
乾いてパサパサになると、萎れて、縮んで、枯れます。
湿って水滴がつくくらいになると、そこにカビや雑菌が繁殖し、傷みます。


実物と根物は放任主義で

とは言え、実物や根物には皮があり、自分の身を守っていますので、あまり神経質にならなくても大丈夫です。
ビニール袋でも新聞紙でも何でもいいので軽く包んで、あるいは届いた段ボール箱のままで、保管します。


葉物とキノコは過保護で

葉物やキノコ類は、湿度に対してデリケートですので注意します。

冷蔵庫に入れる時は、裸は厳禁です。
冷蔵庫の空気は、基本的に乾燥しています。(この頃は湿度を保ちながら冷やす高性能な機械もありますが)
裸で入れた野菜は、早く乾いて、萎れてしまいます。

ただし「ただのビニール袋」に入れるのも、できるだけ避けましょう。
野菜から蒸散した水分が、冷蔵庫で冷やされ、ビニール袋の内側に水滴として付いてしまうためです。それで野菜が濡れると、そこから傷みやすくなります。

ではどうするか?

そのまま使おう八百屋の袋

八百屋やスーパーで野菜が陳列されている時、農家さんから野菜が届いた時、硬めの触感のフィルムみたいな袋に入っているのを見たことありませんか?
実はあれ「ボードン袋」という野菜を長持ちさせるために開発された素材の袋なんです。
漢字で書くと「防曇袋」文字どおり、曇りを防ぎ、水分が結露しにくくなるように表面加工されています。
(メーカーにより「FG」など他の名称で販売されています)


届いた野菜がボードン袋に入っていたら、そのまま冷蔵庫に入れるのがいいです。
適度に湿度を保ちつつ、袋に水滴がつくのを防いでくれます。
穴あきのボードン袋でしたら、なお良し!です。

ただし長期間になると防曇機能も低下しますので、古いボードン袋の再利用は避けましょう。

残念ながら、葉物やキノコ類がボードン袋以外で届いてしまった場合は、新聞紙で包み直すのが良いでしょう。
適度に湿度を保ちつつ、余分な水分は発散してくれます。

ちなみにボードン袋は、郊外(畑の多い地域)のホームセンターや農業資材店、東京都内でも、シモジマのような業務用品の店で販売されています。またモノタロウなどの業務用品ネット通販でも入手できます。
100枚単位で数百円(1枚あたり数円)から販売されていますので、野菜の保管にこだわりたい方は、探してみてください。


野菜の保存あれこれ

保存しない方がいい野菜

ここまで保存方法を書いてきましたが、残念ながら、保存に適さない野菜もあります。

アスパラガス、とうもろこし、スナップえんどう、枝豆

これらは収穫直後から、次第に味が落ちていく品目です。
冷蔵庫で保存することで、傷まないように、食べられる状態をキープすることはできますが、時間が経つうちに味が抜けてしまいます。
そういう意味で、あまり在庫せず、こまめに仕入れて、早めに使い切った方がいい野菜です。

あるいは、仕入れたらすぐに茹でて冷凍し、冷凍庫で保管するのもいいでしょう。

機会があれば、ぜひ畑にいって「採りたて」「もぎたて」を食べてみてください。
違いがはっきりわかります。

逆にこれら以外の野菜は、時間が経ってもそれほど味が落ちませんので、安心してお使いください。


保存で美味しくなる野菜

一方で、保存した方が美味しくなる野菜もあります。

まずは かぼちゃ、さつまいも などのデンプン質が多い実物、根物です。

デンプン質といえば、それを集めて精製したのが「片栗粉」ですが、あの味(というか無味)を想像してください。
収穫直後のかぼちゃ、さつまいもはデンプン質が多く含まれ、火を通すとホクホクしますが、味は物足らないものです。
それが保存するうちに、デンプン質が糖に分解され、甘みが出るようになるのです。

農家さんも、収穫後すぐには出荷せず、デンプンの分解がある程度進むまで倉庫で寝かせています。
露地栽培であれば、真夏に収穫されるかぼちゃですが、倉庫で寝かされ、市場に出回るのは秋になってからです。同様に露地さつまいもも、秋に収穫されますが、市場に出回るのは晩秋〜初冬になります。

上手に春先まで保存されたものは、さらに甘みが増してますので、ぜひお試しください。

もう一つは、白菜、キャベツ などの結球する冬の葉物を、冷蔵庫で保存した場合です。

これらの野菜は、玉の状態で冬を越し、春に花を咲かせます。冬の寒さで凍らないように、糖分を作り出して中心部に集めようとします。
北国では、この性質を利用して野菜を雪に埋め、「雪下〇〇」といった名称でブランド化しているものもあります。
冷蔵庫で保管していても、同様の効果があります。

これらも、上手に春先まで保存されたものは、甘みが増しています。
有機栽培のものであれば、エグ味もありませんので、ぜひ一度、サラダでお試しください。


野菜の状態と保存日数の関係

同じ条件で保存しても、残念ながら早く傷んでしまう場合があります。

原因の一つは、収穫した日の天候です。
雨の日に収穫した葉物や実物は、表面に水滴や、泥がついていて、そこから傷みやすくなってしまいます。(根物は泥が付いていて当たり前なんですが)

農家さんも、できるだけ泥を落とし、水気を取ってから出荷するように努力されていますが、小規模で多品目を作っている農家さんでは、洗浄や乾燥の設備がなく、対応が難しい場合があります。また機械を使っても取りきれないものがあります。

野菜を収穫しているのは、お届け日の1日〜2日前ですから、雨の翌日・翌々日に届いた野菜は「こいつは長持ちしないかもしれないな」と念頭に置きながら、次の仕入れを検討していただけると幸いです。

もう一つの原因は、収穫した時期です。
旬の始め(はしり)と終盤に収穫した野菜は、最盛期に比べると、日持ちがよくありません。

特に旬の始め(はしり)には「おぉ!今年もやっと出たか!」と嬉しくなって、一気に注文したくなりがちですが、日持ちしませんし、はしりの野菜は味が乗ってない場合もありますので、慎重にご検討ください。

ビオシェルジュでは、それぞれマークをつけて表示していますので、野菜選びの参考にしてください。

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