有機農産物の流通を担う業者どうしの対談企画・第2弾、塩澤忠文さんの後編です。
前編 では、市場勤務での体験談や、会社のこれまでの歩みを伺い、産直販売の意義について語り合いました。
後編では、オーガニック野菜の普及における課題と、その解決策について、産地に近い業者ができること、消費地に近い業者ができること、その役割分担といったところに話を深めていきます。
【塩澤】塩澤忠文さん
有機野菜の仕入れの課題 どこまで個性を認めるか
【塩澤】飯田市が「人と環境に優しい生産者ネットワーク」っていう研究会を立てたんですよ。そこに生産者とか販売者とか飲食店とか呼んで、定期的に消費者団体と話たり、イベントで農産物を販売したり、そういうことをやってたんです。そこで出会った若い生産者とか有機農家の方から、市場だと「規格(編者注:販売の一単位あたりの大きさや重量)が揃ってない」って安くしか買ってくれないんだけど、あなた直売所やってるんだったら、こういうの(有機野菜)売れる?って声をかけていただいたんですね。
【塩澤】ちょうどその頃、東京の飲食店の方でも「有機」っていうキーワードが出てきたので、少しずつ卸し始めたっていう感じですね。その後2006年に有機農業推進法が成立したのが大きかったです。地元でも「南信州ゆうき人(びと)」っていう会が立ち上がって、新規就農の人もそこに集まって、その販売面で声をかけてもらって、増えましたね。
【塩澤】その前は「何か特別な野菜」っていうぐらいのボヤっとしたイメージだったんですけど、扱ってみたら、個性的ですよね。規格がバラバラだし、味もバラバラだし。でもかえって、それが心地良かったと言うか、個性がわかるから良かったですね。
【塩澤】だから、その個性を、どう活かして売っていくの?って考えました。農家さんが二人いた場合、両方合わせて「有機のキュウリ」って売るよりも、Aさんのキュウリ、Bさんのキュウリ、あなた好きな方どっち?って選べる環境を整えていこうかなっていう思考に変わってきましたね。
【塩澤】そうですね。うちでもカリフローレ(編者注:花蕾が塊にならない細長いスティックタイプのカリフラワーの一種)みたいなカリフラワーを持って来られたことがありました。若手の農家さんだし、いろいろチャレンジした結果なので、何かお金に変えてあげられないかとも思いましたけど、そこは厳しくしました。
【塩澤】そこは、買い手と作り手の間で「これならOK」って合意さえできれば、辻褄が合うわけじゃないですか。そこのオープンな関係を如何に大きな枠で作っていけるか、っていうことが今のウチの課題だと考えています。
【塩澤】そうですね。それで、なぜアウトなのか、どうしたら良くなるのかっていうのが双方で見えて、来年はそこに行きましょうね、って話し合えるようになっていくと良いかなって思ってるんです。
産地の目標 安定供給+野菜が選ばれる理由をわかりやすく
【塩澤】有機の生産者の「揺れ」がある部分、大きさや形であったり、収穫量だったりが安定しないのを「仕方ないね」って、仕入れるお客様まで付き合ってもらっているところがあるんです。農家さんには、そこをもう少し何とかできませんか?一緒に考えませんか?っていう提案を、今少しずつしてるんです。
【塩澤】長野県の農家さんでも、肥料がどう分解されて植物に吸収されるか、土壌分析して、土の中で起きていることを意識して、栽培している人がいらっしゃいます。その人に「葉っぱが黄色くなりました」って言うと、何が足りてないから、どういう資材を入れた方が良い、とかわかったりするんです。それも、いつも同じじゃなくて、天候とか色んな要素にも左右されやすいので、そこを理解して対応しないといけない。そういう技術や工夫を、生産者どうしで共有することで、各農家さんが安定生産できるようになって、品質も良くなる、そういうところを目指しています。
【塩澤】そのノウハウを共有できる仕組みを、ネット環境か何かで作ろうと思っているんです。ゆくゆくは、それがマクミノルさんのような卸売業者だったり、その先で野菜を仕入れるお客様とも共有できるようにして「有機だから良い」だけじゃなくて「有機で、どういう技術・取り組みをしてるから、味が良い」とか「安定供給できます」とか、そこが言えるようにしたいんです。お客様も選ぶ理由がはっきりしますよね。
醤油や味噌だと、2年寝かせるとか、木の樽で作ってるとか、あそこの麹菌がいいとか、そいうところも見て選ぶじゃないですか。農産物もそれができるようにしたいんです。
消費地の目標 農家の本当の姿を伝え 食べ物への意識を高める
【塩澤】私もゲーム会社にいた頃は、食べるよりも、ゲームやってる方が大事でしたもんね(笑)そこで「ビタミンCが100」とか「レタス100個分の〇〇」って言われると、それ食べたし健康になったかな、って思ったり。
【塩澤】なるほど。
【塩澤】そうですね。
【塩澤】そういうところに行き着く考え方とか、マクミノルさんって近いなーって感じるんですよね。これからも一緒に、新しい武器を作って、やっていきましょう。
【全員】ありがとうございました。
補足情報
塩澤さんが代表を勤める生活菜園さんでは、この春から社屋内に野菜の一次加工の設備を整えられました。生の野菜の卸売に加えて、カット野菜、蒸し野菜、野菜ペースト、乾燥野菜、粉末化(パウダー野菜)などへの取り組みも始められています。
野菜ペーストは、すでに離乳食の製造会社への納品が始まっているそうです。
カット野菜など、一次加工済み製品の仕入れをご検討の方は、ぜひ生活菜園さんにお問い合わせください。
取材日: 2018/06/23
今回の対談は、ここまでです。いかがでしたか?
前編でも、ディープなお話を伺っています。併せてご覧ください!
生活菜園さんが選んだ長野県産こだわりの有機野菜は ビオシェルジュ でも注文を承っております。
ぜひログインしてお確かめください。